もしフューチャーセンターが、会議室のようなたんなるツールであったら、「複雑な社会問題」を解決することはできません。

もしフューチャーセンターが、たんに問題を抱えたステークホルダーが集まり、議論をするだけの場であるならば、問題解決の可否はファシリテーターと参加者の能力次第になってしまうでしょう。それでは、フューチャーセンターの価値が半分も発揮されません。

フューチャーセンターには、セッションを成功させるための「原則」があります。それを私は、「対話の場づくり」の伝道師であるボブ・スティルガー氏と、欧州のフューチャーセンター・アライアンス共同創業者のハンク・キューン氏と一緒に、明らかにしてきました。次の6つが、「フューチャーセンターの原則」です。

フューチャーセンターの原則

1.フューチャーセンターでは、想いを持った人にとっての大切な問いから、すべてが始まる
2フューチャーセンターでは、新たな可能性を描くために、多様な人たちの知恵が一つの場に集まる
3フューチャーセンターでは、集まった人たちの関係性を大切にすることで、効果的に自発性を引き出す
4フューチャーセンターでは、そこでの共通経験やアクティブな学習により、新たなよりよい実践が創発される
5フューチャーセンターでは、あらゆるものをプロトタイピング(試作)する
6フューチャーセンターでは、質の高い対話が、これからの方向性やステップ、効果的なアクションを明らかにする

これらの原則を深く理解し、フューチャーセンター・セッションを設計することで、きわめて高い確率で「よい場」を創ることができるようになります。よい場の条件とは、参加者が多くの気づきを得て、何か新しい行動をしたくなるような、新たな関係性が生まれていることです。もちろん、このことは「複雑な問題解決」とはイコールではありません。

ここは、フューチャーセンターを理解する上で、たいへん重要なポイントです。

アウトプットを出すために、よいアイディアを持っている人だけが発言するような雰囲気を作ってしまっては、それは決して「よい場」とは言えません。アウトプットよりも、まず全員が参加し、気づきを得るプロセスを大切にします。そして、そこから「集合的な知恵」が創発されてくるのを待つのです。ファシリテーターにとって最大の責務は、「創発されてきたよいアイディア」を逃さずつかみ取り、全員の目に入る場所に大きく記述することです。「創発が起きたぞ!このアイディアでブレークスルーできるぞ!」と言うムードを演出するのです。