野村恭彦●イノベーション・ファシリテーター。国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)主幹研究員。富士ゼロックス株式会社 KDIシニアマネジャー。K.I.T.虎ノ門大学院ビジネスアーキテクト専攻 客員教授。 ©Eriko Kaniwa
5.あらゆるものをプロトタイピング(試作)する

この原則は、デザイン思考とも通じるものです。仮説の段階でそのコンセプトの完成度を高めるよりも、とにかく目に見える形に表現してみることです。一人ひとりが異なるイメージを持っていたことに気づくこともあるでしょうし、具体化する際によいアイディアが「降りてくる」こともあるでしょう。プロトタイピングの形は、絵でも、コラージュでも、システム図でも、物語でも、何でも構いません。表現をサポートするツールが、フューチャーセンターには溢れています。

6.質の高い対話が、これからの方向性やステップ、効果的なアクションを明らかにする

アクションプランは、「やらねばならないこと」であることが多く、往々にして、「なぜそれをやらねばならないのか」が共有されていません。それに対して、質の高い対話が生み出すものは「一緒にやりたいこと」です。そこには、目指したい方向性の共有があり、そして具体的なステップのイメージが物語として共有されています。お互いの状況を深く理解していれば、効果的なアクションをとることも難しくありません。

これら6つの原則は、ハウツーではありません。ファシリテーターの「あり方(being)」に関わるものばかりです。これらの原則を守りながら、「よいプロセスが創発を導く奇跡」を起こしましょう。このような奇跡が起きることをファシリテーターが強く、強く信じること。それはつまり、参加者全員を信頼することです。多様性ある参加者が力を合わせれば、複雑な社会問題も解決していける、そう強く信じることがすべての始まりです。あとは、参加者の力に任せて、奇跡が起きるのを待つばかりです。