では、このような「よいプロセスが創発を導くという奇跡」が起きるために、6つの大原則がいかに重要か、述べていきたいと思います。

1.想いを持った人にとっての大切な問いから、すべてが始まる

最初の原則は、「問い」の質に関するものです。情熱のない問いは、何の変化も起こしません。さらにその問いに、社会的な共通善が含まれていなければ、「未来のステークホルダー」に対話に参加してもらうこともできません。問いの質を高めるためには、つねに社会全体のことを考えて行動することです。社内の論理で行動している人は、問いもどうしても内向きです。

2.新たな可能性を描くために、多様な人たちの知恵が一つの場に集まる

多様な人たちを集めるのは、実際にやってみようとすると、易しいことではありません。自分が合理的な人生を送っていればいるほど、近い領域の人とばかり付き合うようになります。社会的テーマを掲げて多様な人を集めようとしたとたんに、自らの人脈のせまさに愕然とする人は少なくないでしょう。できる限り多様な、たくさんのコミュニティに属すようにしましょう。遠回りのようですが、それが最大の近道です。

3.集まった人たちの関係性を大切にすることで、効果的に自発性を引き出す

この原則は、「奇跡」を起こす上での最も重要なポイントになります。一人ひとりの話をきちんと聴く、それもできるだけ少ない人数に分かれて「傾聴」します。そうすれば、確実に関係性が深まります。そのためには、全員でディスカッションするような雰囲気よりも、少人数でインフォーマルに対話する機会を多く作るのが効果的です。人は、自分の話を聴いてもらえていないと感じているとネガティブになります。参加者全員が相互に話を聴くことで、全員のポジティブなパワーを引き出すことができるのです。

4.そこでの経験やアクティブな学習により、新たなよりよい実践が創発される

新しいアイディアは、うんうんうなっていれば思いつくものでもありません。時には、「実際にやってみること」が、思いもよらないグッド・アイディアを生み出してくれるでしょう。セッションが終わったときに、自分たちの出したアイディアがどれだけ素晴らしいものなのか判断できない、ということもよく起きます。でも、安心してください。それは、創発のパワーが、一人ひとりのイマジネーションを超えたアウトプットを出してしまったということなのです。