フューチャーセンターには、きわめて強力な「思想」があります。「世界観」と呼んだ方がしっくり来るかも知れません。その世界観とは、「世界は私たち一人ひとりの関係性でできあがっている」というものです。

いま、日本人のなかに「ヒーローが現れてほしい。その人が何か変えてくれるはずだ」という依存的マインドが広がっているように思います。これは、フューチャーセンターの思想と相反する発想です。

フューチャーセンターでは、このように考えます。

・エコシステムを作っているのは、私たち一人ひとりの関係性である。
・今日この部屋にいる100人がネットワークするだけで社会は変わる。
「未来のステークホルダー」を選ぶのは、私たち一人ひとりの意志である。
・社会イノベーションのエコシステムは、私たち一人ひとりの行動の結果である。
このような考えを具現化したのがフューチャーセンターである。

つまり、誰もが社会イノベーションの一翼を担う力を持っているということ、そして逆に言えば、誰もが社会イノベーションの阻害要因にも成り得るということなのです。

このような世界観を持つと、「新しいつながり」を広げることが、そのまま「イノベーション」の可能性を広げることを意味するようになります。そんな経営者やプロジェクトリーダーが増えて、金融システム、情報システム、不動産開発、電気製品、流通チェーンなどのあらゆる現場で、社会イノベーションを起こしていくことが、私たちの社会を変えることになるのです。

フューチャーセンターの目的は、未来を自分たちの力で創り出すことです。そのために、既存の枠組みを超えて、未来のステークホルダーとの関係性を築き、ともに発想し、行動していくのです。そのための行動が、すでに起き始めています。

たとえばKDIのフューチャーセンター・デザインプログラムには、2010年度は9社の企業が、2011年度には7社の企業と3つのソーシャルセクターの団体が参加し、産業やセクターを超えて協力し合いながら、それぞれのフューチャーセンターを立ち上げる活動を進めています。その中には、既存事業ではライバルの企業も一緒に未来創りで協業しています。それぞれが主催する未来を創り出すセッションには、お互いを招待し合い、知的にぎわいを生み出しています。さらに、ここにソーシャルセクターが参入したことで、イノベーションの視野が一気に広がりました。想像してみてください。日本の大企業の経営企画、研究企画のメンバーたちが、企業を超えた枠組みで、社会課題をどうやって解くか、NPOのリーダーと真剣に対話している姿を。