フューチャーセンター・セッションの成功の鍵を握るのは、もちろんファシリテーターです。

野村恭彦●イノベーション・ファシリテーター。国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)主幹研究員。富士ゼロックス株式会社 KDIシニアマネジャー。K.I.T.虎ノ門大学院ビジネスアーキテクト専攻 客員教授。 ©Eriko Kaniwa

ファシリテーターは、セッションの設計と運営の責任を持ちます。未来志向と対話、プロトタイピングの方法論を多数使いこなし、多様な参加者の持つ経験や知識を問題解決に総動員させていきます。抽象的な言い方をするならば、「場を信頼し、集合的な知恵を引き出す力」を持っていなければなりません。

フューチャーセンターに興味を持っているという人に必ずといっていいほど聞かれるのが、「ファシリテーターを育てるのは難しいのではないか、うちの会社にはいないのではないか、ファシリテーターには特殊な才能が必要なのではないか」、といった「難しさ」に関することです。

いまから2年前に、『裏方ほどおいしい仕事はない!』を発行しました。この本では、裏方から会社全体を動かしていくコミュニケーションのあり方を「事務局力」というコンセプトで提示しました。事務局は、まさに組織やプロジェクトのファシリテーターです。

面白いことに、この本に対するレスポンスは大きく二分されました。典型的なフィードバックの一つは、「自分自身がやってきたことが、ここに体系的に書かれている」という喜びの声でした。組織を動かそうとする人は、知らず知らずのうちに同じような行動原理で動いているのだ、と言えるかもしれません。もうひとつのタイプが、「これはコミュニケーションのうまい人にしかできないやり方ではないか」というがっかりの声でした。最初は後者のように感じた人が、「試しに一つやってみたら周囲の見方が変わった」という嬉しいエピソードもいただきました。私自身は、多様なステークホルダーの異なるゴールを意識し、柔軟にコミュニケーションすることは決して難しいことではないと考えています。できるかできないかというよりも、やるかやらないかの問題なのです。