フューチャーセンターにとって、空間のパワーはなくてはならないものです。でも、専用空間がなくてもそのパワーを引き出すことは可能です。
「フューチャーセンターには、専用空間は必要条件なのですか?」と、よく聞かれます。私はいつも、「あった方がいいが、なければできないわけではありません」という、まるで「お化けには足があるのか?」と聞かれたときのような、中途半端な答えをしてしまいます。
誤解を恐れずに言えば、次のようなメタファーが分かりやすいと思っています。
フューチャーセンターは、「未来のステークホルダーが集まって対話をすることで世界は成り立っている」という「思想」です。専用空間は、「教会」みたいなものです。教会がなくても祈ることはできますが、思想を布教・普及させるためには、教会を作ることが大切です。でも教会の建物があるだけでは不十分で、神父さんがいなければ教会は成り立ちません。
フューチャーセンターの「空間」の意味合いは、宗教であれば「教会」、学校であれば「校舎」です。「ディレクターとファシリテーター」は、「神父」であり、「校長や教師」です。そして「フューチャーセンター・セッション」はプログラムですから、教会であれば日曜日の「礼拝」、学校ならば「授業や運動会」に匹敵するものです。
いずれにしても、専用の空間は、宗教や学校の普及にとって、きわめて重要なものになります。フューチャーセンターも同じで、これが当たり前になってしまえば、シブヤ大学のように「街そのものがキャンパス」といった想像力を働かせることもできるようになります。同様に、「街全体をフューチャーセンターにする」というアイディアは、とても素晴らしいものになるでしょう。
ここでは、専用空間を持つかどうかということではなく、どんな場所であっても、うまく「場づくり」を行えば、「よい場」を作ることができるということをお話ししたいと思います。お茶会をやるときには「茶室」はほしいものですが、「野点」もなかなか面白い、ということだとお考えください。
まず、「よい場」とは何か、というところから入りましょう。
その場に来た人が真っ先に、「ここは違う」と感じられることです。まずは美しいことが最大の基準です。何か迷ったら、どちらが美しいかで決めましょう。場所を選ぶのであれば、セッションが行われる部屋だけでなく、その周辺にどんな自然があるのか、といった「全体的な場所」を意識しましょう。できるだけ「自然」を感じられる場所である方がいいのですが、都会の中にも自然が美しく存在するところもあります。また、花や石などを部屋に持ち込んで、部屋の中に自然を作り出すのも、一つの方法です。こういった知恵は、茶道や華道に多く見られるものだと思います。