自分の意志で「未来のステークホルダー」を選び、彼ら彼女らとつながっていくことで、あなたから見える世界の風景は変わってきます。
野村恭彦●イノベーション・ファシリテーター。国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)主幹研究員。富士ゼロックス株式会社 KDIシニアマネジャー。K.I.T.虎ノ門大学院ビジネスアーキテクト専攻 客員教授。 ©Eriko Kaniwa

フューチャーセンターの魅力は、そこが「未来のステークホルダー」と出会える場所であることです。

想像してみましょう。あなたの未来のステークホルダーは誰なのでしょうか。映画や物語では、偶然か必然か、重要な出会いのシーンがあり、そこから話が急転直下、大きく展開していきます。それまでの平凡な世界とはまったく違う、エキサイティングな毎日が始まるのです。フューチャーセンター・セッションでの新たな出会いが、あなたの仕事の意味を一変してしまうかも知れません。

これは決して夢物語ではありません。ある会社のフューチャーセンター・セッションでは、大きな意識の変化が生まれました。数字に追われて毎日仕事をしている参加メンバーたちでしたが、登壇ゲストでお招きした社会起業家やデザイナーの情熱的な話を聴いた後、「すでに起き始めているステークホルダーの変化」について、深い対話を行いました。この日の対話は、彼ら彼女らに大きな変化を与えました。最後に輪になって全員が一言ずつコメントしたときに、何人かのメンバーから、「私たちには、自分の仕事を通して社会を幸せにすることができると思った」、という言葉が出てきました。この言葉は、参加メンバー全員の声を代表したものでした。

この日の参加メンバーの多くが、後日、その日の登壇ゲストに会いに行きました。その人に紹介してもらった多くの現場を皆で訪問しました。たとえば、高齢者のケアを先進的に行っている施設、完全循環型生活を送っている農場、障害者が活き活きと働く飲食店などに訪問しました。彼ら彼女らが会議室で、「世の中に弱者なんて、本当はいないんだ。外部環境が、彼らを弱者にしてしまっているだけで、本当は多様性にすぎないんだよ」、と熱弁をふるっているのを見て、本当にうれしくなりました。たった一ヶ月で、これほどまでに発想が変わってしまったのです。このようなことが偶然ではなく、かなりの確率で起きるのがフューチャーセンターなのです。この変化は、誰に強制されたものでもなく、自分自身で気づき、内発的に突き動かされたものです。未来のステークホルダーとの出会いが、その人の、心の中にもともとあったものを引き出したのです。