一つひとつの仕掛けを使いこなすには、スキルが必要です。やったことのない人には、難しく感じられるかも知れません。でも、どれも特殊能力ではありません。経験すれば、誰でも上手になっていきます。

フューチャーセンター・セッションでは、ファシリテーターは対話に「リズム」を与えます。2人で親密に話してもらったり、4人でテーブルを囲んでもらったり、全員で輪になって話したり。ポストイットやホワイトボードに書いたり、モノを作ったり、シナリオを演じたり。理解と解釈、発散と収束、共感と綜合を繰り返すことで、感情を呼び起こし、脳にも刺激を与えていきます。こういった方法論を多数使いこなせるようになってほしいのですが、最初は3つくらいの方法論を覚えておけば、とりあえずセッションを開くことはできるでしょう。すべてが経験と実践です。

最後に、私自身がフューチャーセンター・セッションのファシリテーションをする際に、もっとも気をつけていることをお知らせしたいと思います。それは、英語で言うところの"tension"(テンション)をコントロールすることです。それはネガティブになると「緊張感」となり、ポジティブになると「張り」になります。ヴァイオリンの弦の張りを適切に保つように、セッションの開始から終了まで、このテンションをずっと気にしながらファシリテーションをしていきます

ヨーロッパのフューチャーセンターの一つ、オランダの「カントリーハウス」では、「遊び心(Playfulness)と必死に働く(Work hard)を両立するのがフューチャーセンター」と定義しています。ここで扱う問題は、一直線に向かってもゴールに到達することができない、複雑な問題です。では、どうアプローチすればいいのでしょうか。まず、楽観的になって道を探し、遠回りをしてみます。もしその道が間違っているようであれば、粘り強く新しい道を探していきます。この楽観的かつ諦めないで探索し続けることが、フューチャーセンターの醍醐味です。これをファシリテーターは、舵取りしなければならないのです。

テンションの話に戻りましょう。私がファシリテーションをするときは、次の2つを意識しています。

A)コミュニケーションの「緊張感(tension)」を下げる
B)コミットメントにたいする「張り(tension)」を高める

たとえば、セッションの最初にA)を意識してアイスブレイクをするときもあれば、いつも知った同士のメンバーが集まっているセッションであれば、逆にB)をいきなり仕掛けて、「今日はいつもと違う対話をするぞ」という張りを生み出します。緊張している人には、敷居を下げるガイドをしますし、逆にリラックスしている人に発言を求めるときは、「さあ、そろそろ結論を出していただきましょう」のように張りを高めるガイドをします。どちらもユーモアをもってガイドすることを忘れてはなりません。

場のテンションを感じられるようになったら、もうあなたは一流のファシリテーターです。場の緊張感(tension)を下げる介入、張り(tension)を高める介入をそれぞれ意識してトライしてみてください。