(4) 所信を断行する勇気を示す

しなやかな企業は流行を追わない。最新のビジネス理論を鵜呑みにすることも、ウォール街のご機嫌を伺うこともしない。また、「ずっとそうしてきた」からというだけで現状を無条件に受け入れることもしない。最善の嗅覚と情報にもとづいて戦略的進路を描き、自分たち自身が集めた市場情報がその有効性を裏づけているかぎり、その進路を進み続ける。組織改革についても同様だ。必要な場合は組織を改変するが、改革のための改革や、取締役会やアナリストや株主の機嫌をとるための改革は行わない。しなやかな組織は社員を信頼しており、戦略目標が変わったとしても社員は効果的な決定を下して、それを実行することができると信じている。したがって、目標を追求するにあたり――そして一時的な逆境に対処するにあたり、つまずくことが少ない。

(5) 逆境からすばやく立ち直る

このうえなくしなやかな組織でも逆境にぶつかることはある。健全なDNAを持っていても、それは外部のあらゆるリスク要因からシステムを守ってくれるわけではない。しかし、内部の迅速な対応を促す働きはしてくれる。技術革新であれ、景気後退であれ、競争相手からの挑戦などに直面したとき、しなやかな組織は早めにそれに気づいてすばやく対応策をとる。責任をなすりつけ合ったり、うわべを取り繕ったりして時間や資源を無駄にすることはない。しなやかな企業は、真正面から敵に立ち向かう。傷んだ箇所を切り離して、中核市場でのポジションを守り抜く。さらに重要な点として、攻勢のチャンスをとらえて積極的に成長を追い求める。しなやかさとは「強さや活力をすばやく取り戻す能力」なのだ。

(6) 水平的に思考する

組織というものをイメージするとき、人はたいてい階層構造を思い浮かべる。しかし、しなやかな組織は、自らの世界観にもう一つの次元を持ち込むことができる。

しなやかな組織は、組織の階層を減らして縦の境界を越えて活動し、サイロのような縦長構造を取り壊し、ベストプラクティスを広め、部署横断的に協働し、水平的に昇進させることで、価値を余すところなくつかみとる。しなやかな組織は水平的に思考し、より協調的かつ効率的で幅広い能力を持つ組織の利点を享受する。

しなやかな組織を維持するためには、情報の上下の流れや組織の境界を越えた流れがきわめて重要だ。別の事業部や別の部署の誰かが、あなたの情報を手にすれば顧客によりよいサービスを提供できるという場合には、あなたはその情報をその人物に与える。それはあなたが、そのほうが会社のためになることを認識しているからだ。

(7) 自動修正する

しなやかな組織は、問題が特別チームでの対応を要するほど、あるいは利益を脅かすほど拡大する前に、問題を見つけて修正する内部メカニズムを制度化している。情報はタイムリーかつ健全に流れ、必要とする人間が容易にアクセスすることができる。システムやプロセスには、外部からスイッチを入れる必要のない自動的なフィードバック・ループが備わっている。しなやかな企業は自動修正する有機体であり、成長とともに学習していく。