「私がいなくなったら、この子は収入がなくなります」

次男に関しては20〜40代にいたる間、両親はなんとか社会とのつながりをもたせるよう働きかけましたが、ことごとくうまくいきませんでした。もう何を言ってもムダなのかと徒労感にさいなまれることもしょっちゅうでした。そうした中、父親は病に倒れました。

現在、次男は収入こそありませんが、家族としての役割を果たしているようでした。とはいえ、長男がしっかりと自立しているだけに、母親にとっては次男が心配なようです。

暗い部屋であごに手をやりたたずむ男性
写真=iStock.com/chingyunsong
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「今は夫の遺族年金(夫の遺族年金と自分の年金の合計額が年229万円=月約19万円)があり、ほぼそのお金の範囲でなんとか二人で生活していけます。しかし、私がいなくなったら、この子は収入がなくなります。戸建ての自宅(持ち家)を売却して、少し小さなマンションに住み替えようと思いますが、どうでしょうか?」

「う~ん。条件にもよりますが、実は住み替えをしても、あまりお金は残らないんですよ」

私はあまり賛成できません。

住み替えには思いのほか、多くのコストがかかります。例えば、不動産業者への仲介手数料、譲渡益に対する所得税、不動産取得税、登録免除税、司法書士への手数料、引っ越し代……。さらに自宅の売買となると、同じタイミングで売買するために、売値を引き下げたり、あわてて購入したり、といったこともあります。これらを踏まえると、大きな戸建て住宅から間取りが小さいマンションへ住替えても、それほど残りません。逆に持ち出しが必要になるケースもあります。

すると母親はこう言います。

「では、売却だけして、次は賃貸マンションでも構いません。長男と遺産分割をすることを考えると、できるだけ預金を多くしておいたほうがいいと思うんです」

「う~ん。それも条件次第です。賃貸住宅であれば、毎月の家賃がかかるようになりますので、長い目で見るとかえって費用がかかってしまいます」

「でも、いつかは売らなければなりませんよね。長男はすでに自宅を持っていますので、家を残してもしょうがないし……」