相続した次男が自分で自宅売却できるかが最後の問題

母親は安心したようです。

「では、今のまま自宅に住み続けたほうが得なのですね。私もできれば、今の自宅に住み続けたいので、そのほうが良かったです」

「条件次第でシミュレーションの結果は変わってきますので、これだけで断定はできません。それでも相続した後にお子さんが売却するという方法は、相続税の節税効果もあり、親亡き後の生活設計の有効な手段となります。ただ、心配な点もあります」

「なんでしょう?」

母親は不安な表情を浮かべました。私は続けます。

「失礼ながら、相続したお子さんが売却できるか、ということです。売却できずにそのまま住み続けると、生活資金が不足してしまいます」

「一人では難しいですね」

「どなたかのサポートが必要です。お兄様の協力は得られそうでしょうか?」

「おそらく協力してくれると思います。兄弟仲は悪くありませんし、長男は、次男が生活できなくなって孫たち(長男の子供たち)に負担が及ぶのを心配していますので」

「それは心強いです。それでも、ひきこもりのお子さんは、引っ越しなど生活環境の変化が苦手な人が多いようです。特に長年住み続け、物が多いと消極的になってしまいます」

月明かりに照らされる一軒家
写真=iStock.com/urbancow
※写真はイメージです

「う~ん、そうですね。その時にどう思うかは、まだわかりませんね」

「場合によっては、資金的な面や税金面で不利であっても、早めに転居をしたほうがよい場合もあります。すぐに決める必要はありませんので、息子さんとお話してみてください」

「はい。長男夫婦も含めて話をしてみたいと思います。でも、住み続けてもよいとわかって、少し安心できました」

「いろいろな要素が関わってきますし、条件次第で状況は変わります。損得を比較するだけでなく、ご家族が納得いく暮らし方を探してみてください」

結論は出ませんでしたが、それでも相談に来た時と違って、母親の表情は明るくなっていました。

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