勉強が苦手な子どもをひとくくりにしていませんか。精神科医の岡田尊司氏は「勉強が苦手という子には大きく分けて5つのケースがあり、中には、あまり勉強にはこだわらずに自分のやりたいことを追求しているうちに、天性の才能が開花し、大化けすることもある」といいます――。

※本稿は、岡田尊司『発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

机に突っ伏して、「HELP」のカードを掲げる少年
写真=iStock.com/vejaa
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勉強が苦手になる子どもの5つの原因

勉強が苦手というケースでも、その子のもつ特性はさまざまだ。原因により、大きく5つくらいのタイプに分けられるだろう。

一つは、知的能力が全般に低い場合で「知的障害」と呼ばれる。意外に気づかれにくく、支援からも漏れやすいのは、知能のグレーゾーンで、「境界知能」の場合だ。

また、言語面の能力だけが低いものが、「言語障害」だ。数学は得意なのに、国語や社会が極端に苦手で、話す言葉もたどたどしいという場合に疑われる。

三番目は、全般的な知能は正常範囲なのに、ある領域の学習能力だけが極端に低いもので「学習障害」と呼ばれる。つまり、学習障害は、勉強ができないという意味ではない。漢字を書くこと、文字や文章を読むこと、計算や算数といった一つの領域が極端に弱いところがあるとき、診断される。ある領域に限られていることを示すために、「限局性学習障害」という用語も使われる。

四番目は、知的能力自体の問題によるというよりも、注意力や課題遂行の能力の問題のため、集中力が維持できなかったり、提出期限が守れなかったりして、学業に支障をきたすもので、ADHDが代表である。

五番目も、知的能力自体の低下はないものの、こだわりが強く、関心が偏ってしまうために、好きな教科しか勉強しなかったり、細部にばかり気をとられ、効率のよい勉強ができず、よい成績がとれない場合で、ASD(自閉スペクトラム症)の傾向をもった子によく見られる状況だ。

本稿では、グレーゾーンのケースに多い、境界知能と学習障害を中心に説明することにしよう。