もうひとつは、強いセンサーが備わっている人。わかりやすくいえば、感性、感受性が強い人です。

IBMという会社は、変革を続けてきた会社です。1990年初頭に業績悪化に陥り、大規模なリストラを断行し、さらに、ハードメーカーからソリューションカンパニーへと脱皮してきた。変化することを余儀なくされた結果、いまでは変化が常態化しています。会社も人も変わることができるのです。IBMのDNAとはなにかと問われれば、常に変革を続けることであると言い切ることができます。

いま、IBMが提供しているソリューションとは、ハードやソフトといった製品ではなくて、自らが変革してきた姿そのものなのです。つまり、自らの変革が止まれば、売るものがなくなってしまうのです。

進歩がない同じ仕事のやり方をする「ルーチンワーカー」はいらない。自らが成長することに貪欲に取り組む「スマートワーカー」が欲しい。それが私の想いです。

世の中は進歩しているわけですから、同じ仕事をやるというのは、前進でも、そこに留まっているわけでもなく、後退を意味する。社会のスピードよりも早く前進しなくては遅れることになるんです。

私は、「変化を楽しもう」と社員に言っています。ビジネスはどんどん変化していく。それにあわせて自分も変化していく。もちろん、変化をすることは苦しいことです。だが、これが苦行になってはいけない。

ビジネスマンは、1日の半分以上を仕事の時間に費やしています。この時間を苦痛にせず、楽しまなくてはいけないと思うんですよ。

楽しくやれば、お客様に対する顔も明るくなる。仕事への自信も出てくる。顔の引きつった営業マンからモノを買う人はいません。楽しそうに仕事をしている人からモノを買いたい。だから、楽しくやる「余裕」が必要なんです。

営業の数字が悪い社員はいます。その理由はいろいろとあるでしょう。経済環境もあるし、担当分野もあるし、上司との折り合いもある。だから、数字だけでは絶対に評価しない。数字が悪いから、いらない社員ということにはなりません。

営業の仕事を「売る人」と定義したら苦行です。売れるのは結果。どうやってお客様に価値を提供するのかを考え、それが実現すれば、お客様に喜んでもらえ、自分も成長できる。結果として会社も成長し、それが収益につながる。そういうサイクルができます。営業の仕事は、「お客様に価値を提供する仕事」と思えれば、途端に楽しくて仕方がなくなりますよ。

※すべて雑誌掲載当時

(大河原克行=構成 fred2ie=撮影)