今日のファンドは「もの言う株主」

最後に、ハゲタカファンドについても触れておきましょう。

1990~2000年代の企業買収には多くのケースで、ハゲタカファンドが絡んでいました。もちろん正式な呼称ではなく、以下のような各種ファンドが、瀕死の企業を食い物にして強引な手法を採った際、否定的な表現として「ハゲタカ」と呼ばれました。

バイアウト・ファンド:投資家から集めた資金で会社そのものを買い取り、企業価値を高めてから売却し、利益を得るファンド。
企業再生ファンド:投資家から集めた資金で、会社の債権買い取りや出資などを行い、企業価値を高めて売却、利益を得るファンド。
アクティビスト・ファンド:投資家から集めた資金で一定数の株式を保有し、会社に経営提案などを行う「もの言う株主」がカンフル剤となるファンド。ちなみに「ライブドアvs.フジテレビ」で話題になった村上ファンドは、これにあたる。
会議場に並ぶ青い椅子
写真=iStock.com/ImageGap
※写真はイメージです

ただし「バイアウト・ファンド」「企業再生ファンド」など、対象企業のステークホルダー(利害関係者)を無視したM&Aばかりでは、社会全体がM&Aに否定的になり、ファンドとしてもうまくいきません。ですから今日は「アクティビスト・ファンド」の形が主流になっています。

つまり今日のファンドは、強引な乗っ取りよりも「もの言う株主」として、企業の株価上昇に貢献する経営改革などを提言する道を選んでいるのです。

現在、世界のM&A市場は活況を呈しています。日経新聞によると、2021年のM&A実行額は4兆3901億ドル(約500兆円)と、過去最高を記録しました。その理由は「金融緩和でだぶついた資金がM&Aに向かっている」「不況で売却を希望する企業が多く、譲渡価格が下がっている」「今なら競合他社が少ないとの経営判断」などですが、すべての根底にあるものは「新型コロナウイルス感染症」です。

コロナ禍で加速したM&Aですが、もの言う株主が経営陣に喝を入れてコロナ不況を乗り切ることができれば、今後は「不況対策の1つとしてのM&A」という形が定着するかもしれませんね。注目しましょう。

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