昨今、モノの値段はじわじわ上がり始めている
最近、値上げについてのコラムを書く機会が増えてきた。書くタイミングによって「値上げ品目リスト」がどんどん増えていることを感じる。
昨年末は牛丼とガソリンの値上げが話題となった。今年に入ってからは電気代、食パン(小麦)、サラダ油、カップ麺と生活必需品に幅広く値上げが拡大している。
駄菓子の値上げなども大きな話題となっているようだ。10円が12円だと笑っている人も多いが、40年以上据え置きを続けていた価格が20%上昇すると考えれば、象徴的だ。
今回の一連の値上げトレンドの興味深いところは、値上げ幅が数%にとどまらないことだ。牛丼が387円から426円に値上げされたと考えればこれは10%の値上げになるし、カップ麺等の上昇幅は品目によるが5~12%と報じられている。
過去にも、1リットルの牛乳を900ミリリットルのパッケージにし価格据え置きとするようなステルス値上げが行われ、実質的に10%相当の値上げといえたが、「5%超」「10%超」といった値上げが相次ぐと、家計としてはもはや無視できないものとなってきた。
ガソリン代の値上がりが一過性のものとなるかはまだ読めないものの、これも値上げ幅は大きい。こちらはもはや10%どころの騒ぎではなくなってきている。
2022年の値上げトレンドは価格据え置きガマン比べ終了のお知らせ
まだ年明けから2カ月の段階で、今年のトレンドを語るには早すぎるかもしれないが、ひょっとするとこの値上げ傾向はこれから何年も継続する「物価上昇元年」のスタートラインなのかもしれない。
一般論としていわれる価格上昇要因のいずれもが値上げの必要性を示している。
まず、人件費の高騰。少子高齢社会の到来は非正規の若者を低コストで使う時代ではなくなった。アルバイトの最低賃金も都市部では上昇し、それでも人材を確保できない状況にある。同一労働同一賃金の取り組み、社会保険適用拡大の取り組みなどもあいまって、企業が正社員なみの雇用をすれば、人件費をセーブすることは困難だ。
次に、原材料費の高騰だ。消費者の手元で価格上昇がある前段階として食材や工業製品の原材料コストが跳ね上がるわけだが、多くの分野でその傾向は報じられている。かつては低コストで原料を輸入できたはずが、もはやその常識が通じなくなっているわけだ。
そして、輸送コストの上昇。ここで無視できないのは円安トレンドとガソリン原油価格の上昇だ。
いずれにせよ、企業が「価格据え置きを耐える」という限界が近づいているとみたほうがよさそうだ。値上げによる客離れを恐れたガマン比べ大会も、2022年、終わりを告げようとしているのかもしれない。