「家の売却は、息子が絶対に『うん』と言わないです」

すると高齢の母親は困惑するだけで、思考は停止しているように見えた。そのため、さらに進言した。

「今のままですと、お母様の預金が底をつくのも時間の問題だと思います。預金を含めた全財産が5万~7万円程度まで減れば、生活保護の申請はできますが、おふたり分の年金額を考えますと、仮に生活保護の受給が認められても、手取りがそれほど増えるわけではないはずです。年金分は、生活保護費から差し引かれますので。それよりも、現在住まれている自宅を売却して、当面の生活費を確保することは考えられませんか?」

生活保護申請書に書き込みをする人の手元
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

「家の売却は、息子が絶対に『うん』と言わないと思います」

「息子さんがどんなに嫌がっても、今の時点で現金化できるものはご自宅しかありません。それに、山崎さんのおウチが生活保護を受給できるか否かは、微妙なところです。リフォームする前の家であれば、おそらく居住地の生活保護の基準以下だったかと思いますが、リフォームをされたことで、判断が難しくなっています。息子さんが一人で暮らす時期の問題でもありますので、生活保護課に足を運んで、山崎さんの家は保有したまま、生活保護が受けられるのか、調べてみることをおすすめします」

家を持っていると生活保護が受給できないと思い込んでいる人も少なくないが、そうとは言い切れない。居住地で定めている基準価格以下の住宅であれば、家賃分に当たる住宅扶助は受け取れない代わりに、自宅に住み続けることはできる。しかも生活保護が開始されると、固定資産税の支払いが免除される点も安心材料だ。