相続財産は長男の散財でみるみる減った
50代の長男と次男が相続財産を受け取ることになったのは、現在82歳の山崎さんが50年以上前に離婚した元夫(子供の父親)が亡くなったため。両親の離婚後は、子供たちは3回くらいしか父親と面会しておらず、父親の存在すら忘れているような状態であった。
離婚後の母子は、母親の実家に身を寄せて暮らしてきた。祖父母が裕福だったことから、養育費もまったく受け取らないまま、子供たちは成人した。
養育費を受け取っていなかったこともあり、亡くなったという知らせを受けても、特に悲しいという感情はわかなかったと、山崎さんは言う。ところがしばらくして、再婚後に生まれたお子さんから、相続財産の話が舞い込んできた。しかも1億円を超える金額を、長男と次男に相続させるという話だったので、山崎さんは腰を抜かすほど驚いた。
相続税の計算なども先方がきちんとしてくれて、各人名義での納税も済ませたのち、長男と次男の銀行口座にはそれぞれ1億2000万円を超える相続財産が振り込まれた。息子たちも、しばらくは事態をのみ込めずに、ただただ驚いていたそうだ。
1億2000万円もの大金を手にした次男は、残っていた住宅ローンを完済した。そのほか、子供たちの大学資金などの教育費に充てたが、それ以外は自分たちの老後資金にするため、資産運用の勉強をするなどして、大切に管理している。今も9000万円以上の相続財産が残っているらしい。
一方の長男は、1億2000万円を超える大金を手にして、とにかく舞い上がってしまったそうである。それまでもお金の管理は苦手で、月7万円の障害年金を好き勝手に使っているだけではなく、年金暮らしの母親にお金の無心をする機会も少なくなかった。
そんな長男はまず、亡くなった祖父母から母親が相続した家を、6000万円もの大金をかけて、新築同然にリフォームした。
「リフォームなのに、なぜ、6000万円もの費用がかかったんですか?」と尋ねると、「家がそこそこ広いというのもあるのですが、息子が細部までこだわって、好きな素材を使ったりしたので、結果的に費用がかさんでしまいました」と母親はいう。