相続財産は5年で底をついた

家の高額リフォームに加え、ひと月10万円を超えるタクシー代、趣味にかけるお金、高額になる入院費などにより、長男はなんと5年で、相続財産のすべてを使い果たしてしまった。

長男の相続財産がなくなったことに母親が気づいたのは、長男から「タクシー代を貸してほしい」と頼まれたことがきっかけ。「タクシー代がなくて、コンビニに行けないから、タクシー代とコンビニ代の5000円を貸してほしい」と頼まれたのである。

それまでも、長男の金遣いの荒さは気になっていた母親だが、手元にどのくらい残っているのかを尋ねると、機嫌を損ねて部屋に閉じこもってしまうため、当初は本当のことは聞けなかったそうだ。だが、「タクシー代がない」と言われて、さすがに驚いた母親が口座の残高を確認したところ、「800円しか残っていない」と言われたそうである。

コンビニ店員がペットボトルのバーコードをスキャン
写真=iStock.com/TAGSTOCK1
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「残高は800円」と聞いた母親は、相続財産を受け取れると聞いた時と同じくらい、驚いたという。愕然とした母親が悩んだ末、私のところに相談に来たわけである。

聞けば、山崎家の全財産は、母親が持つ預金の120万円だけ。この預金も、少しずつ減っているため、底をつくのは時間の問題だ。主なやりとりは下記のようなものだった。

「相続財産を受け取る前から、お母様の預金は今くらいの金額でしたか?」

「いえ、私は自分の親から3000万円を超える預金を相続したのですが、息子との生活で毎月10~20万円くらいの赤字が出ているため、今の金額まで減ってしまいました」

「息子さんの相続財産はすでに使い果たしたわけですから、時間を過去に巻き戻すわけにもいきません。将来的に、息子さんがひとりになったときには、生活保護のお世話になることも含めて、生活設計を立て直す必要があります。いずれにしても早急に、息子さんのお金遣いを改める必要があります。お金遣いが改まらなければ、親子で路頭に迷うことになりますから」

加えて、「収入の倍近い支出がありますが、なにか節約ができるものはありませんか?」

と尋ねてみると、こう言って口ごもるばかり。

「頑張れば2万~3万円くらいは減らせるかと思いますが、それ以上はなかなか……」

ならばと深刻さを伝えるために、こう伝えた。

「月々17万円の年金で、2人分の生活費を賄っているご家庭は、世の中にたくさんあります。食費は2人分で上限が4万円、光熱費は2万円、電話代は携帯電話を合わせて1万円など、17万円の中に納まる予算を立ててみてください。予算を立てたら、息子さんにもその予算を守ってもらえるように、厳しく言い聞かせてください」