悩んだすえ「利益追求とは汚いことではない」と気づいた

経営をしていくうえで、最初に私が遭遇して悩んだのは、利益追求ということをどのようにみんなに分かってもらうか、ということでした。

特に技術で会社を立てていこうとしていましたから、大卒の優秀な人たちを大勢入れて仕事をしていかなければならない。そういうインテリたちにも納得してもらわなければなりません。

そのなかでどうしても気になったのは、「あなたはきれいごとを言っているけれども、結局、企業というのは利益追求が目的なんでしょう」と言われることでした。まさに私は利益を出さなければならないと思って、みんなに「頑張れ、頑張れ」と言っているわけですから、それにはやはり非常に悩みました。

利益を求めることはダーティというか、汚いというか、私自身にもいくらかそんな思いがあったのです。ですから、そういうふうに詰め寄られると、フッと詰まってしまう。

そして悩んだすえに気がついたのは、利益追求とは汚いことでも何でもないということでした。利益がなければ昇給もしてあげられないし、ボーナスも出せません。

利益は将来の保証になる

もし利益が出なくて、従業員の人件費やら何やらで一定の経費だけがかかるとしますと、それだけでいっぱいいっぱいで余裕がなくなり、もう来年の昇給はできないことになります。今、利益があるということは、来年も再来年も昇給の余裕があることです。つまり経営に余裕があるということは将来の保証になるわけです。

では、上がった利益はどうするのか。半分は税金に取られます。そして残ったお金は会社に内部留保として入れる。内部留保というのは銀行からの借入れを減らし、借入れがなければ預金をして、その金利がさらにまた利益を増やしていく、という性質のものです。

私は、「天地神明に誓って、私は利益を私物化する気はありません。それは会社を支えるために、会社に取っておきます。従業員のためにこの会社を立派にしなければならないので、そのまま取っておきます」と、利益が出ることの意義を正々堂々とみんなに話しました。