物事を正しく判断するには、どういった考え方を持てばいいのか。京セラ名誉会長の稲盛和夫さんは「直感で判断してはいけない。直感的に考えると、自分に都合がいいかどうかで判断してしまい、巡り巡って損をする」という――。

※本稿は、稲盛和夫述・稲盛ライブラリー編『経営のこころ 会社を伸ばすリーダーシップ』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

稲盛和夫さん
写真提供=稲盛ライブラリー

自分に都合のいいことは、周りに都合の悪いことかもしれない

部下から相談があったり、仕事をどう進めようかと考えたりと、経営者は物事を判断していかなければなりません。判断をするときに、ともすると我々は直感的に考えて判断します。しかし、トレーニングされていない人間が直感的に判断する場合、だいたい本能で考えています。

本能とは、我々の心の中に備わった基本的なもので、肉体を持つ自分自身を守るために与えられた心です。ですから本能という心は、自分が有利になるようにすべて物事を考え、行動します。

つまり利他の心、人によかれという心とは対極的です。これは肉体を持っている自分を守るために神様が与えてくれたものであり、善い悪いという問題ではありません。

直感的に判断すると、どうしても本能で考えます。自分の会社に都合がいいか悪いか、自分の会社が儲かるか儲からないかというように、全部、自分に都合がいいかどうかで判断しようとするわけです。これは普通、経営者が皆やっていることです。

ところが、自分自身に都合がいいということで判断すれば、自分にとってはいいかもしれないが、周囲の人には都合が悪いかもしれません。