クラウドファンディングで3655万円超を集めたが……
コロナ禍になって20年以降の世界一周の船旅は延期になり、現在も実施には至っていない。苦境に立っていると考えられるピースボートを支援しようと、20年にはクラウドファンディングが立ち上がった。
「#がんばれピースボート コロナショックで船旅を出せないピースボートを助けたい!」と題したプロジェクトで、支援の中心となったのは過去にピースボートに乗船した人たちのようだ。20年7月30日までに、目標金額の3000万円を超える3655万円余りを集めた。
使途を聞いたところ、広報担当者は「家賃や人件費などの活動費として、全額を使用させていただきました」と回答した。しかし、収支報告などは公開されていない。
「説明を受けたことはまったくありません」
以前専従スタッフとして働いていたAさんは、ピースボートが民法上の組合として運営されていたことは「まったく知らなかった」と話す。労働環境が法人とは異なり、責任パートナーになれば出資や赤字負担が求められる性質上、本来であれば事前に説明されるべきだが、説明を受けた記憶はないという。
「民法上の組合という形での運営という説明を受けたことはまったくありません。在職中もそのような説明をされていたという話は、他のスタッフから聞いたことがないですね。今回お話しさせていただいたのは、本来あってはならない返金のトラブルを20年に起こし、そして今もいつ始まるか分からないクルーズの販売を続けている陰で、苦しんでいるスタッフがいると思ったからです」
「クルーズに参加すれば楽しいですし、スタッフの仕事にもやりがいを感じます。けれども、その思いを踏みにじるような労働環境や責任パートナー制度には、やはり問題があるのではないでしょうか」
ピースボートは国際NGOとして長い歴史を誇り、知名度もある。今回、証言を寄せたAさんはピースボートの活動の意義を評価し、船内での勤務も「楽しかった」と振り返る。しかし、その活動内容は「やりがい搾取」だった恐れがある。どれだけ崇高な意義があるとしても、「好きでやっているのだから仕方ない」として若者から搾取するのは、ここでやめるべきではないだろうか。