「地球一周の船旅」を支える疑問だらけの労働環境
「地球一周の船旅」と書かれたポスターを見たことがある人は多いだろう。旅行会社のジャパングレイスが販売し、業務委託を受けたNGOのピースボート(本部:東京都・新宿区)が運営する世界一周クルーズを宣伝するポスターだ。
2020年春、筆者はプレジデントオンラインで、ジャパングレイスがキャンセルの返金をめぐって観光庁や業界団体から指導を受けたことを報じた(20年4月28日「『200万円は返せない』世界一周クルーズ“ピースボート”の開き直り」)。クルーズの販売は継続されているものの、コロナ禍で今もクルーズは実施できないままだ。
記事公開後、筆者の元にピースボートのスタッフの労働環境に関する疑問の声が寄せられた。ピースボートでは「専従スタッフ」と「ボランティアスタッフ」が働いている。このうち専従スタッフはフルタイム勤務だが「給与は低く、手当は不十分」であるという。しかも、「赤字」が出た場合に多額の費用を負担する「責任パートナー制度」といった不透明な制度もある。
「ずっとこんな給料で生活していくのだろうか」
「給料は本当に安くて、ずっとこんな給料で生活していくのだろうかと随分悩みました。夜10時過ぎまで残業する日が続いても、残業代は一切出ません。しんどくなって辞めました。あまりに大変だったので、辞める直前のことはよく覚えていません」
こう話すのは、以前ピースボートで専従スタッフとして働いていたAさんだ。すでに給与明細は捨ててしまったそうだが、通帳を見せてもらうと、20代前半の給与の振込額は15万円弱。ピースボートは、健康保険と厚生年金を会社負担する制度がなく、自分で国民健康保険と国民年金を支払っていたという。そうなると、実質的な手取りはさらに減ってしまう。