事業の「赤字」を負担する「責任パートナー制度」

ところが、専従スタッフになると、程なくしてさまざまな問題に直面する。給与の低さや、社会保険制度の未整備、サービス残業などの労働環境については前述したが、それだけではない。「責任パートナー制度」という赤字補塡ほてんの仕組みがあるのだ。

ピースボートのホームページを見ると、責任パートナーを「複数の共同代表」と表現している。関係者によると、専従スタッフから責任パートナーになるには、3人の推薦人が必要で、その上で立候補を宣言して、認められる必要がある。

その際、誓約書にサインを求められる。コピーなどの控えはもらえない。Aさんが疑問に感じたのは、「出資金」を支払わなければならないことだ。

「責任パートナーとなると毎年5万円を払います。『出資金』と説明を受けました。さらに、何年かに1度は、『赤字が出たから』といって、お金を払うことが求められます。決して少ない金額ではありません。70万円のときもあれば、100万円以上になるときもあります。給料が安いので貯金はなく、どこかで工面するか、払えない場合は毎月の分割払いで給料から天引きされて、少ない手取りがさらに減ることになります」

責パにならないと「本気でやっていない」と馬鹿にされる

これだけの金額を負担しなければならないのであれば、誰も責任パートナーになりたいとは思わないのではないだろうか。しかし、専従スタッフの間では、責任パートナーに立候補せざるを得ない雰囲気があるようだ。Aさんは話す。

「ピースボートのために働きたいのであれば、やっぱり責パ(責任パートナー)になるべきだと言われることが多いです。でも、ならなければいけない明確な理由は誰も言いません」

「立候補しないままでいると、『ピースボートのスタッフを本気でやっていない』と馬鹿にされることもあります。仕方がないので立候補しました。ただ、出資金も含め、責任パートナーから集めた金がどのように使われているのかは分かりません」

確かにピースボートのホームページを見ても、財務情報は掲載されていない。関連団体としての一般社団法人ピースボートいしのまき(現在は一般社団法人ほやほや学会に改称)は、財務情報を公開しているが、ピースボート自体はどうやら法人化していないように見てとれる。