クルーズ中の3カ月間は休みが一切ない

勤務実態を聞くと、時期によっては長時間の残業が続くが、基本的にはどれだけ働いてもサービス残業。日曜日にはクルーズの説明会のために出勤することが多かったが、残業代などの手当は支払われなかった。

ピースボートセンターとうきょうが入居する東京都内のビル
写真=田中圭太郎
ピースボートセンターとうきょうが入居する東京都内のビル(新宿区高田馬場)

世界一周クルーズにスタッフとして乗船すると、勤務はさらに過酷になる。クルーズ中の約3カ月間は休みがない。シフト勤務の考え方すらないため、睡眠時間が十分に取れない日も珍しくない。それでも残業代や手当は出ないのだという。

話を聞いていると、どのような雇用形態になっているのだろうかと疑問が湧く。しかし、本人も「よく分かりませんでした」と話す。ある程度の年数勤務したものの、退職金はなかった。

「世界一周の船旅」のポスターを貼るのはボランティア

ピースボートの設立は1983年。この年に小笠原、グアム、サイパンなどを訪れ、第2次世界大戦を知る当事者に会いに行く旅を実施した。以後、世界一周クルーズを実施するようになり、国際的な社会問題に対して取り組む国際NGOとして活動している。

一方で、クルーズの販売については、95年からジャパングレイスが行うようになる。ピースボートの現在の収入は、クルーズの船内企画や、交流ツアーのコーディネートの費用など、ジャパングレイスからの業務委託費が中心とみられる。

ピースボートの運営には多くのボランティアスタッフも関わっている。街で見かける「世界一周の船旅」のポスターを貼るのはボランティア。お店に頼んでポスターを貼ってもらい、3枚ごとに1000円分のポイントが付与される。そのポイントをためることで、クルーズに参加できるシステムだ。また、クルーズに通訳などのボランティアで参加すると、やはり乗船費用が免除される。

ジャパングレイスの社員の採用は、就職情報サイトなどに載っている。一方、ピースボートの専従スタッフの募集は見つからない。関係者によると、専従スタッフの募集はボランティアスタッフの経験者に声をかけることが多いそうだ。世界一周クルーズに感動し、自分も一緒に働きたいと意欲をもった若い世代が、専従スタッフになることが多いという。