ラボのメンバーは10代後半から20代前半のZ世代で、最も使っているのはインスタグラムとTikTokだ。しかしミクアはこう言う。
「インスタグラムは機能がどんどん複雑になってなんだかよく分からない」
インスタグラムはもともと、フィルターを使った加工写真を友達との間で共有する、写真シェアリング・プラットフォームだった。そのシンプルな機能とスタイリッシュなデザインが若者の支持を得た理由である。インスタグラムは自分の美学やアイデンティティを表現する特別な場所だった。
ところが、それが2016年頃から変わり始めた。インフルエンサーが注目されるとそのパワーを利用したショッピング機能が加わる。さらに投稿の順番が時系列からアルゴリズムを利用したものに代わり、上がってくるのは人気コンテンツや広告で、見たい友達のポストはなかなか見つからない。さらに2020年にはTikTokに対抗しビデオ投稿のリールを導入。Z世代のユーザーは、こうした多機能化をフェイスブックと同様クールであろうと躍起になっているように映り、逆にダサいものとして見ている。
しかし、インスタ離れの理由はそれだけではない。
いいねの数や他人の投稿に落ち込んでしまう
長いステイホームで多くの若者がソーシャルメディアに依存する生活を送る一方、アプリを削除するZ世代も出ている。
20歳の中国系アメリカ人シャンシャンは言う。
「一時はすごくハマっていたのですが、アジア系に対するヘイトクライムの投稿があまりに多くて恐ろしくなり、アプリをすべて削除しました。それ以来ソーシャルメディアは使っていません」
これは極端な例かもしれないが、同じ頃、音楽シーンのスーパースター、メガン・ジー・スタリオンやセリーナ・ゴメスがインスタを一時休止宣言するなどの動きも出ている。
ソーシャルメディアに依存する若者のメンタルへの影響はこれまでも問題視されてきた。いいねの数が増えないと落ち込む、楽しそうな他人の投稿を見て落ち込む……。自分のベストを投稿するインスタグラムでは、誰もが実際の自分よりもよく見せているのが分かっていても、どうしても自分を他人と比べてしまう。それでもやめることができないのは、アルゴリズムの進化によって志向に合った投稿を見つけやすくなり、さらに依存性が高まったからとされている。