「ザッカーバーグは欲に走った悪魔だ」
冒頭でソーシャルメディアの勢力図が変わっていると書いたが、中でもフェイスブック、インスタグラムに対して、アメリカの若者は日本人が想像する以上に厳しく見ている。
ラボのメンバーは口々に言う。
「インスタもフェイスブックも広告だらけになった。ショッピング機能までついて金儲けに走っているとしか思えない」、ケンジュに至っては「マーク・ザッカーバーグは欲に走った悪魔だ」とまで言うほど。
Z世代は社会正義に非常に敏感な世代だ。インスタグラム自体も、2022年のトレンドの一つに「社会正義」を挙げている。それによればユーザーの52%が、人種平等や環境保全など何らかの社会正義に関わるアカウントをフォローしている。
グレタ・トゥンベリさんで知られる気候ストライキもブラックライブスマターも、中心になっているのはZ世代だ。彼らは、社会問題解決の足枷となっているのは、大企業の利益優先主義や行き過ぎた資本主義だという考え方を持っている。だからフェイスブックやインスタのやり方が、自分たちの個人情報を吸い上げて売ることで搾取している、若者のメンタルや社会を破壊するような投稿であっても売り上げのためなら目をつむり、あまりにも拝金主義的で倫理的でないと憤りを持つ者は多い。
それをさらに倍増させているのが、フェイスブックの新たな動きだ。
最先端の「メタバース」にも冷ややか
フェイスブックが「Meta(メタ)」と名前を変え、本格的なメタバース(仮想現実)時代の先陣を切ろうとしていることに注目している方も多いだろう。パンデミックの影響もありメタバースはすでに現実になりつつある。人気ブランドが次々にメタバース上での商標登録を進めているというニュースもある。
しかし、メタバースに期待するZ世代は3分の1しかいないという数字もある。仮想空間で生活する未来を描いた映画「Ready Player One」のようなディストピアのイメージが強いからだ。
フェイスブックがメタバースに参入したのも、ソーシャルメディアでの人気下降をカバーするためだと感じており、ユーザーを長時間滞在させることで金をむしり取る金儲けのツールというネガティブな見方が強い。先日の株価下落は、そのメタバースへの移行がうまくいっていないことを象徴している。
2022年のアメリカは中間選挙を迎える。ソーシャルメディア上の情報戦は2016年、20年の大統領選以上に激しくなるだろう。フェイクニュースやディープフェイクにどう対処していくのか、2022年のソーシャルメディア業界はあらゆる意味で過渡期になりそうだ。