成長を続ける人の絶対条件「闘争心を糧にして努力すること」

その後、経営が軌道に乗り出してからも、闘争心に火をつけられる場面には何度も出くわした。そしてそのたびに見返してやろうといっそうの努力をするというくり返しだった。

ビジネスウーマンリーダー
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たとえば、ある大手電機メーカーである。創業当時、そのメーカーに製品のサンプルを納めたところ、その製品をそっくり真似されてしまった。そのうえ、逆に「日本電産が真似をした」といううわさまで流されたのだ。

「零細企業だからといって、ばかにしやがって」と悔しい思いを募らせたものだ。

しかし、それが「いまに見返してやる」という発奮材料になったのだ。

また、こんなこともあった。創業当時、お金を貸してほしいと銀行を訪ねたところ、支店長は、「お貸ししたいのはやまやまなのですが、本店がどうしてもウンといわないんです」という。だから、貸せないというのだ。要は方便を使って体よく断っているのだ。

しかし、そんな社会通念にうとかった私は、本店に乗り込んでいった。

担当者の席まで行って、「支店長は融資したいといっているのに、本店が反対していると聞いている、なぜですか」とやる。当然ながら、相手は「そんな話は聞いていません」という。

再び支店長のもとを訪れて「話が違うじゃありませんか」と問いただすと、「本当に本店に行ったのですか」といって目を白黒させている。そんなことは日常茶飯事だった。

絶対に赤字を出してはいけないと訴える理由

とくに経営の現場では、銀行をはじめとする金融機関に不愉快な思いをさせられることも多かった。

たとえば、グループの傘下に買収した企業の話だ。経理担当者に聞くと、経営が行き詰まった末期には、十八もの金融機関から融資を受けていたというのだが、「いっさい人間としての扱いをしてもらえませんでした」と泣きながら訴えるのだ。

こちらも同情し、「わかった。どの銀行に腹が立っているのか、順番をつけて紙で出してくれ。その順に借金を叩き返して回ろう」ともちかけた。

後日、その紙を受け取ったところ、全部が「一番」になっていた。それを見て、担当者の悔しさが痛いほど伝わってきた。すぐに、すべての金融機関に借金全額を返済したことはいうまでもない。

また、これも銀行の管理下に入った大手電機メーカーの社長を訪ねたときの話だが、応接室のソファに穴が開いている。驚いていると、社長が「この修理にも銀行の印鑑が要るのです」とばつが悪そうにいっていたのが忘れられない。

私が経営をするうえで絶対に赤字を出してはいけないと訴える理由の一つはここにある。赤字が続くと、銀行が入ってくる。銀行が入るようになったら、企業は終わりである。