セブン‐イレブンに無人店は作らない
あるいは、われわれがつくるものも、ただ便利であればいいというものでもありません。例えば、最近コンビニに自動レジが導入され始めています。もっと進んで、商品にICチップを付けて、店の外に出るだけで自動的に会計される無人コンビニなんていうのも開発が進んでいます。
ある意味では非常に便利ですけれど、本当に普及させるべきものかと言われれば、そうは思いません。
セブン‐イレブンでは、基本的にはこれまで通り対面で、会計だけをセルフでするレジを導入しています。より省力化した店舗も考えていますが、それも無人コンビニではなく店員が常駐するかたちを考えています。
やっぱりみんな、「人と接したい」という本能を持っていると思うんです。新しい商品のことなどについて、店員に聞きたいということもある。それをなぜ遮断しなくてはいけないのか。そこにある種の不便さを感じるわけです。
「お客様のために」では、お客様が何を感じているのかはわからない。
「お客様の立場」というのは、「お客様がどう感じるか」を考えるということです。その姿勢でしか見えてこないものがある。お客様の立場に立ちながら自分で発想するということを、忘れてはいけないんです。
アメリカのセブン‐イレブンは全然便利じゃなかった
セブン‐イレブンは、アメリカから持ち込んだものと思われている人が多い。もちろん間違っているわけではなくて、私がアメリカを訪れたときにセブン‐イレブンを見たのが始まりです。
ただ、アメリカからノウハウを持ち込んだということではありません。アメリカのセブン‐イレブンと日本のセブン‐イレブンとでは、本質的に全然違うんです。
アメリカのセブン‐イレブンを最初に見たとき、これはいわゆる「便利店」なんだなと思いました。ただ、サービスも商品も非常に限られていた。24時間やっている便利店だけれど、並べられている商品の質やラインナップは十分とは言えなかった。便利店と言いながら、全然便利じゃなかったということですね。
だったら、日本のセブン‐イレブンでは、いろいろな商品を扱えばいいじゃないかと考えました。アメリカでセブン‐イレブンを展開するサウスランド社(現・セブン‐イレブン・インク)とライセンス契約をしたけれど、実際の経営ノウハウはあまり参考にならなかった。あとは全部、こちらで思い付くことをやってきたんです。
2005年には、われわれがセブン‐イレブン・インクを完全子会社化しました。いまではアメリカのセブン‐イレブンが、日本のセブン‐イレブンの仕組みをいろいろと学んだり、協力したりしています。