私は富士山に登ったことはないけれども、登るとしたら、丹念に調べて、どこからどう行けばいちばん楽に、あるいは楽しく登れるかを考えます。一方で、「富士山とは吉田口登山道から登るものだ」と決め付けている人もいる。その結果は、相当違うものになるのではないでしょうか。

過去のやり方やデータに頼るような発想の狭さでは、お客様に新しいものを見せられないんです。

われわれは、自分たちが未来から考えることで、お客様にも未来を見せなくてはなりません。

日本初のコンビニエンスストア、そこで売られるおにぎり、24時間お金を下ろせるATM。すべて、「いま、ここにないもの」をつくったわけです。

そうでなければ、お客様は喜ばない。さっき言った通り、必ず飽きるんです、人は。仮にいま満足していたとしても、その先を見せなければいけない。

人が「無理だ」という場所には可能性がある

「これまでのやり方」を抜きに考えれば、突破口は必ず見つかります。少なくとも私は、「やっぱりこれはやめとこう」という判断をしたことがありません。

セブン銀行をつくるとき、ある銀行の頭取さんがいらして、「鈴木さん、銀行ってそんな簡単にできるもんじゃない」と親切に忠告してくれました。私は「そんなに難しいことは考えていないんです。ありがとうございます」と言って帰っていただいた。専門家からすれば、「素人が何を言っているんだ」と思われたのでしょう。

これまで、そんなことはたくさんありました。「無理だよ」と言ってくれる人が多いほど、その声が大きいほど、そこには多くの可能性があります。みんなが反対するということは、大抵成功するんですよ。

誰もやっていないことだから、先駆者になれる。だから、やる価値があるんです。

借り物の発想はつまらない

何かを成すためには、すべて自分のアイデアでやらなければ駄目。借り物の発想では駄目です。

「この人はこう言った」「あの人はこう書いている」と勉強して、それを人に聞かせても、同じようなことを言っている人はたくさんいる。当然、知っている人もたくさんいます。それは大抵、つまらないものなんです。何の説得力もない。相手を飽きさせるだけです。

一方で、自分が発想したことというのは、こうしてみなさんに聞いていただけるものです。

自分の発想が正しいかどうかなんて、考えても仕方ない。