「天ぷらと一緒に食べる」スタイルで大人気

「丸亀製麺」が国内で大健闘を続けている時、粟田社長は全く海外進出を考えなかった。「うどん(UDON)」という日本独自の食文化が海外で簡単に受け入れられるとは考えていなかったからだ。しかし、09年に米国の外食視察でハワイに立ち寄り、朝早く日課のジョギングでワイキキ中心部のクヒオ通りを走っている時、1階建て数寄屋造りの日本家屋風の空き物件を見つけた。これが運命的な出会いとなった。

「ここに製麺機とゆで釜を置いて、丸亀製麺を開こう!」と即決し、人脈を介して物件を借りることに成功した。こうして11年4月、独立資本・直営方式で「MARUKAME UDON WAIKIKI SHOP」をオープンした。

ハワイは米国本土はじめ、欧州、アジア、日本などから観光客がやって来る。ここで「丸亀製麺」は行列のできる大繁盛店になり、グループ全店の中で常にトップの売上高を記録するようになった。

米国本土から観光でやって来る人たちは、天ぷらをたくさん注文した。米国本土には日本の天ぷらの高級専門店が進出しており、天ぷらはすし、ラーメン、焼き鳥などの日本食と同じように知名度が高く、人気が高かった。「丸亀製麺」は、「うどん」単独ではなく、天ぷらやおむすびと一緒に格安で提供したことで、人気を高めていった。

中食に負けないようにと「オープンキッチン」にこだわった

海外に人気の天ぷらを「目の前で揚げる」という実演性も、現地の人の心をつかんだ一因だ。オープンキッチンは、00年に兵庫県加古川でオープンした1号店からずっとブレないコンセプトだ。

丸亀製麺ロンドン店。
写真提供=トリドールHD
丸亀製麺ロンドン店。ライブ感を楽しめるオープンキッチンは現地の人にも好評だ。

「商品以上にパフォーマンスが大切だと思っています。店に入れば、まず目に飛び込んでくるのが製麺機。お客さんの目の前で製麺し、ゆでて、天ぷらを揚げるという“手づくり・できたて”を創業以来貫いています」

目指したのは、子供時代、父親に連れて行かれた讃岐うどん店。国産小麦粉を塩水でこねて製麺機で引き延ばし、包丁で切って、ゆで釜でゆでて提供する。そんな光景が見えるように「丸亀製麺」でもオープンキッチン方式を導入。顧客がトレーを持って、注文したうどんや天ぷらなどをカフェテリア方式で取り、最後にレジでお金を支払う。

アメリカで海外進出支援事業を行っているFood’s Style USA Inc.(ワシントン州)の米田純社長は、「丸亀製麺のように、天ぷらをはじめ薬味、唐辛子などをセルフで選べるカフェテリア方式は、アメリカでは一般的。それまでなじみのなかったうどんがすぐに受け入れられたのも納得です」と言う。

「食べ物を作って売るだけなら、中食に負けちゃうわけじゃないですか。店舗に来ていただく動機になるような“感動体験”を味わってもらえれば、そこから広がるものは大きいはずです。国内でうどん弁当のようなテイクアウトが売れたのも、店内での“感動体験”があってこそだと思います」(粟田社長)