強気の目標達成のためには、うどんだけでは足りない

絶好調に見える丸亀製麺の海外展開。それにもかかわらず、なぜ粟田社長は第2、第3のブランド展開を狙うのか。

「成長のステージを日本から世界に変え、果敢にトライしたい」

21年11月、粟田社長は28年3月期末に全ブランドの海外店舗数を625店(21年9月末現在)から6倍以上の4000店へ増やす目標を掲げた。だが、すし、ラーメン、焼き鳥などといったほかの日本食に比べて、うどんは海外での知名度が低い。「丸亀製麺」では、各国でローカライズしているとはいえ、うどん業態だけで世界を攻めるのは限界がある。華僑に食い込んで大成功した「味千(中国)控股有限公司」(母体は「味千ラーメン」重光産業)のように、強気の目標達成のためにはうどん以外のヌードルで海外商圏に挑戦したいという算段である。

そこで目を付けたのが「米線(ミーシェン)ヌードル」だった。米線ヌードルとは、中国雲南で古くから親しまれている米粉で作ったスープ麺だ。うどんよりもスパイシーで、中華圏では大変人気がある。

18年、トリドールHDは香港の人気チェーン「タムジャイ」を約300億円で買収。その後、タムジャイは、シンガポール、中国本土に店舗を展開。21年12月末現在、166店舗にまで増えており、将来的には1000店舗を目標としている。21年10月にはタムジャイを香港証券取引所に上場させ、約150億円の調達にも成功している。22年春には日本にも出店予定だ。

タムジャイの外観
写真提供=トリドールHD
タムジャイの外観。
タムジャイの内観
写真提供=トリドールHD
タムジャイの内観。

タムジャイの魅力は、さまざまなスパイスを調合したオリジナルのスープだ。唐辛子のコクと旨味に花椒のしびれがアクセントの麻辣スープや、酸味と甘味が入り混じるトマトスープ、焦がしスパイスがやみつきになるウーラースープなど、6種類の異なる味わいのスープが人気を博している。それに加えて、辛さとトッピングを自分好みに組み合わせて楽しめるのも客を飽きさせない秘訣だ。

香港のタムジャイでは麻辣が一番人気。
写真提供=トリドールHD
香港のタムジャイでは麻辣が一番人気。辛さは10段階中1や2とそこまで激辛ではないレベルを選ぶ人が多い。

ゼンショーHDも複数ブランドで世界トップ5入りへ

「丸亀製麺という業態もわが社の柱だが、もう一本の柱ができたような感覚。これで海外4000店を目標とするグローバル展開の入り口に立った」

マクドナルドやスターバックスのように、世界を股に掛けて勝負している外食企業は日本にまだない。国内最大のゼンショーHDは、「すき家」を主力に世界に1万店舗以上展開、売上高は6000億円に迫り、世界外食のトップ5に躍進した。だが、それは18年11月に米国のテイクアウトすし店Advanced Fresh Concepts Corp.(本社:カリフォルニア州)を約288億円で買収したからだ。

Advanced Fresh Concepts Corp.はフランチャイズで米国に3700店舗、カナダ、オーストラリアを含めると4000店舗以上展開し、テイクアウトすし業界では世界トップ企業に君臨する。ゼンショーHDはAdvanced Fresh Concepts Corp.の買収によって世界の店舗数を一気に増やしたが、それまでは「すき家」をブラジル、中国、アジア中心に500店舗程度展開していたのにとどまっていた。要するに、米国発祥のマクドナルドのように、全世界を制覇したブランドを展開しているわけではないのだ。

(左)サイドメニューの一番人気、トーフェイチキン。(右)ピータンも根強い人気を誇る。
写真提供=トリドールHD
(左)サイドメニューの一番人気、トーフェイチキン。(右)ピータンも根強い人気を誇る。