※本稿は、鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 9杯目』の一部を再編集したものです。
病院を一番知っているのは看護師
【渡辺幸子(グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン社長)】この対談前、病院内を見学させていただきました。この病院は看護師さんたちが、にこやかで明るい。私が何者なのか分かっていないはずなのに、笑顔で挨拶してくださるのに感激しました。
【原田省(鳥取大学医学部附属病院長)】(笑いながら)ありがとうございます。(中村真由美)看護部長に伝えます。
【渡辺】お世辞ではなく、看護師さんたちが提供する看護ケアを患者視点で考え、自分の病院を誇りに思っているのが伝わってきました。こんな大学病院はなかなかないです。どうしてこうした風土が出来あがったんでしょうか?
【原田】(戸惑った顔で)いや……どうなんでしょう。ぼくは中にいるから分からないです。一つ言えるのは、看護師がとりだい病院の要だということ。ご存じのように、ぼくたち医師は、診療科によって縦割りになっています。
病院内にいる400人すべてを知っているわけではない。そもそも大学病院では上司は直属の教授です。普通の病院のように病院長が上司ではない。いわば、デパートのように独立した店がたくさん入っているようなものに近い。
【渡辺】診療科ごとの縄張り意識も生まれやすいですよね。
【原田】とりだい病院は少ないほうだとは思いますが、ないとは言い切れません。その中で看護師というのは、診療科を横断した組織。病院内で分からないことがあれば、(中村)看護部長に聞く。そうすればいろんな情報があがってくる(笑)。病院を一番知っているのは看護師なんです。
【渡辺】診療科の壁を低くすることは、ベッドコントロール(病床管理。院内のベッドの運用・調整)とも関わってきますね。ある診療科で患者さんが増えてベッドが足りなくなったとき、他の診療科のベッドが余っていれば、そちらを活用すればいい。
【原田】とりだい病院では、どの診療科も使用できる共通病床を含めて、ベッドコントロールを看護部が担当しています。そのため効率的なベッドの融通が出来ているはずです。