コロナ禍に日本の病院はどう対応してきたのか。病院コンサルタントの渡辺幸子さんは『医療崩壊の真実』(エムディエヌコーポレーション)で急性期病院や病床数は多いにもかかわらず、医療従事者の不足によって医療資源の逼迫が起きたと指摘している。今後、どう改善すればいいのか。渡辺さんと鳥取大学医学部附属病院の原田省病院長の対談をお届けする――。

※本稿は、鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 9杯目』の一部を再編集したものです。

鳥取大学医学部附属病院の原田省病院長(左)とグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン社長の渡辺幸子氏
撮影=中村治
鳥取大学医学部附属病院の原田省病院長(左)とグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン社長の渡辺幸子氏

病院を一番知っているのは看護師

【渡辺幸子(グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン社長)】この対談前、病院内を見学させていただきました。この病院は看護師さんたちが、にこやかで明るい。私が何者なのか分かっていないはずなのに、笑顔で挨拶してくださるのに感激しました。

【原田省(鳥取大学医学部附属病院長)】(笑いながら)ありがとうございます。(中村真由美)看護部長に伝えます。

【渡辺】お世辞ではなく、看護師さんたちが提供する看護ケアを患者視点で考え、自分の病院を誇りに思っているのが伝わってきました。こんな大学病院はなかなかないです。どうしてこうした風土が出来あがったんでしょうか?

【原田】(戸惑った顔で)いや……どうなんでしょう。ぼくは中にいるから分からないです。一つ言えるのは、看護師がとりだい病院の要だということ。ご存じのように、ぼくたち医師は、診療科によって縦割りになっています。

病院内にいる400人すべてを知っているわけではない。そもそも大学病院では上司は直属の教授です。普通の病院のように病院長が上司ではない。いわば、デパートのように独立した店がたくさん入っているようなものに近い。

【渡辺】診療科ごとの縄張り意識も生まれやすいですよね。

【原田】とりだい病院は少ないほうだとは思いますが、ないとは言い切れません。その中で看護師というのは、診療科を横断した組織。病院内で分からないことがあれば、(中村)看護部長に聞く。そうすればいろんな情報があがってくる(笑)。病院を一番知っているのは看護師なんです。

【渡辺】診療科の壁を低くすることは、ベッドコントロール(病床管理。院内のベッドの運用・調整)とも関わってきますね。ある診療科で患者さんが増えてベッドが足りなくなったとき、他の診療科のベッドが余っていれば、そちらを活用すればいい。

【原田】とりだい病院では、どの診療科も使用できる共通病床を含めて、ベッドコントロールを看護部が担当しています。そのため効率的なベッドの融通が出来ているはずです。