自尊心の低いスーパースター
ニールはブリトニー・スピアーズを簡単な心理ゲームに誘った。紙に1から10までの数字のどれかを書き、直感を信じてその数字を当てるというものだ。
この場面はPUAのテクニックがよくわかるので、全文を引用することにしよう。
俺は紙切れに数字を一つ書き、彼女の目の前に差し出した。
「さあ、言って」俺は言った。「最初に感じた数字だ」
「間違いだったら?」彼女は言う。「たぶん間違ってる」
これは俺たちが現場でLSEガールと呼ぶものだ。つまり自尊心が低い(Low Self Esteem)。
「何だと思う?」
「七」彼女は言った。
「じゃあ、紙をめくってごらん」俺は言った。
彼女はそろそろとめくる。見るのを怖がっているかのように。そして目の高さまで持ってきて、自分を見返すでかでかとした数字の七を見た。
彼女は叫び声を上げ、弾けるようにカウチから飛び上がると、鏡に向かって走って行った。映った自分に目を合わせながら、ぽかんと口を開けている。
「信じられない」鏡の中の自分に言った。
「やったわ」
まるで目の前で起きたことが真実であると確信するために、鏡で自分を確認しなければならないかのようだった。
「わぉ」息巻いて言った。
「やったわ」
彼女はまるでブリトニー・スピアーズに初めて会えた少女のようだった。彼女は自分自身のファンなのだ。
これはミステリーが開発したナンパトリックのひとつで、決断をせかして適当な数字を選ばせた場合、70%の確率で数字は「七」になる。ニールはその可能性に賭け、見事に「当たり」を引いたのだ。
その後、ブリトニーはテープレコーダーを止めさせて、魂について、書くことについて、人生についてニールと語り合った。
インタビューが終わると、ブリトニーはニールの肩に触れ、顔一面の笑みを浮かべていった。
「番号を交換したいんだけど」
ニールはブリトニーのフレームを動かし、それまで存在しないも同然だったさえないインタビュアーを、「大事な秘密を打ち明けられる男性」としてフレームの中心に移すことに成功した。無意識へのこの操作は、ブリトニーのLSE(低い自尊心)を利用すれば簡単だった。
ブリトニー・スピアーズはその後、結婚と妊娠・出産、離婚を繰り返し、成年後見人として資産を管理するようになった父親と裁判沙汰を起こすなど世間を騒がすことになるが、ニールの“ナンパ”はそんな彼女の将来をも予見しているようだ。
こうしてブリトニーをピックアップすることに成功したニールだが、何度も逡巡したものの、その番号に電話することはできなかった。
※1 翻訳はエリック・ウェバー『How to Pick up Girls! 現代ギャル攻略法 これだけ知ればパーフェクト!』(小野八郎訳、小学館)
※2 ジョン・グリンダー、リチャード・バンドラー『エリクソン・メソード決定版 催眠誘導 相手の“心”にフワリと飛びこむ㊙ハイテク術』(小宮一夫訳、星雲社)
※3 以下の記述は、ニール・ストラウス『ザ・ゲーム 退屈な人生を変える究極のナンパバイブル』(田内志文訳、パンローリング)より