日本の子どもの精神的幸福度は38カ国中37位

そのように「子ども家庭庁」という、とってつけた感の強い役所名からは、さまざまなオトナの事情が垣間見えるわけだが、では当事者である子どもからすれば、この新名称はどうかというと、「最悪」の一言に尽きる。

日本の子どもたちを100年以上前から苦しめ、時に命まで奪ってきた「子どもは親の所有物なので、第三者が勝手に引き離してはならぬ」という不文律が、これまで以上に強まってしまう恐れがあるからだ。

「日本ほど子どもが大事にされて幸せな国はないし、そんな不文律はない! デタラメを言うな!」と怒りに震える方もいらっしゃると思うが、ユニセフが調べたところ、日本の子どもの精神的幸福度(生活満足度、自殺率)では38カ国中37位(ユニセフ報告書「レポートカード16」先進国の子どもの幸福度をランキング 日本の子どもに関する結果)。

また、そんな国際比較に頼らなくとも、親に虐待され、時に殺される子どもたちが、なぜそのような苦境へ追いつめられていったかという原因を客観的に振り返れば、「子どもは親の所有物」という現実があることは明らかだ。

日本の児童虐待の相談件数は30年間右肩上がりで増え続け、2020年度にはついに20万件を突破。そして当然その中には、親のすさまじい暴力の果てに命を落とすだけではなく、生きることを諦めた親の巻き添いで殺される児童も一定数いる。

第9回児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議幹事会に提出された資料によれば、2003年から2016年まで、727人の子どもが虐待で命を奪われ、514人が「心中による虐待死」で亡くなった。14年間で1241人の子どもが、親から所有物のような扱いを受けて、その短い生涯を終えているのだ。

親からの暴力も愛があれば「しつけ」になる

もちろん、児童虐待は世界中で見られる普遍的な現象なので、日本よりも深刻な児童虐待被害の国もあれば、そうではない国もある。親に殺される子どもの数も桁が違う国もある。

ただ、日本の「虐待で殺される児童」には大きな特徴がある。どんなに本人が「助けて」と訴えても、行政が虐待の事実が確認しても、「やっぱりパパとママと一緒がいいよね」と家庭に送り返して、命を奪われているという点だ。

「子どもの人権」を重視する国では、親が子どもに手を上げただけでも問答無用で逮捕される。行政が虐待の事実を把握しても、親と子どもを躊躇なく引き離すのも一般的だ。しかし、日本では親が子どもをボコボコに殴っても「愛があるので」の一言で「しつけ」になる。

また、行政が虐待の兆候を確認しても、親がちょっとでも後悔や反省の素振りを見せれば、子どもを保護しない。親と子どもを引き離すことを極力避けて、家庭内で児童虐待を解決させようとするのだ。