「何を選ぶか」ではなく「どう向き合うか」を考える
やりたいことがわからない人に必要なのは、「何を選ぶか」よりも「どう向き合っていくか」ではないでしょうか。
たとえば「上司の期待に応えたい」でもいいし、「自分が納得するクオリティにしたい」でもいいし、「とにかく何かの領域で一番になる」でもいい。やりたいかどうかという問題はいったん脇に置いて、対象への自分の向き合い方にフォーカスするのです。
私がコンビニの店長をしていたときは、「会社のお金でいろいろ試せるなんて最高だ。どうすれば売上が上がるのか、とにかく日々試行錯誤して引き出しを増やそう」という発想で仕事をしていました。
SV(スーパーバイザー)というフランチャイズ加盟店を指導する仕事に移ってからは、「どうすれば加盟店からの信頼を得て、自分のアイデアを採用してもらえるか」という発想で仕事をしていました。加盟店の売上・利益を上げるのがSVの重要な役割だからです。
本部のマーケティング部門に移ってからは、「どうすれば売れる企画を立てられるか」「どうすれば現場のSVが納得する販促プランを提案できるか」「どうすれば商品部と営業部が連携してマーケティング施策を実現できるか」という発想で仕事をしていました。
自分が何をやりたいかよりも、「自分に何が求められているか」「自分は何をして組織に貢献できるか」「何をすることが店舗のため、加盟店のため、社員のためになるか」にフォーカスし、それに打ち込んでいました。
コンビニから外資系コンサルへ
そうやって取り組んだ結果、実際に成果が出ると加盟店から感謝された。上司や同僚に認められ信頼され「君に任せるから好きにやってみな」と裁量権が与えられるようになった。そして、ますます仕事が面白くなるという好循環になっていったのです。
それがひとつの自信となり、もっと自分を鍛えたいと思うようになった。それでより高度に知的な仕事をしてみたいと、外資戦略コンサルを目指すことになった。
こうした経験を通じてわかったことは、やりたいことを探すことよりも、自分が没頭できれば、それはやりがいにつながるということです。没頭するには「物事を楽しめる(集中できる)よう自分が関わる」ことが鍵となります。
その関わり方とは、与えられた環境の中で自分の役割と責任を全うする姿勢です。全うしようとすれば、必然的に全力で取り組むようになります。全力で取り組んでいる人には、次の役割と責任が与えられます。
新たな役割と責任に全力で取り組むうちに、自分にとっての課題や次の道筋も見えてくるようになります。その過程で、徐々に自分というものが見えてくるようになるのです。
そう言えば、人気漫画『鬼滅の刃』に登場するキャラクター、煉獄杏寿郎の「俺は俺の責務を全うする!」という印象的なセリフがあります。
これこそが、まさに自分が何者かをわかっている人の言葉だと思います。