旧行出身者がいる限り真の融合はない
過去の反省に立ち、慎重な上にも慎重を重ねたシステム移行作業は無事終了する。みずほFGは、20年3月期決算で、システム統合に伴う償却負担額約4600億円を一括処理した。FGの坂井社長は「これで後年度負担が一気に解消し、より柔軟で機動的な運営ができる」と強調した。
だが、悪夢は新システムの移行時ではなく、思わぬところで起こる。2月28日の3度目の大規模システム障害の発生であった。
金融庁は今回の業務改善命令で、みずほ経営陣によるシステム軽視が障害の根底にあるとの認識を示している。坂井社長は19年に基幹システムが全面稼働すると大幅にシステム要員を減らし、コストカットの圧力をかけたとされる。「長信銀出身者にとって薄利多売のリテールやシステム部門は傍流扱いだった」(みずほ銀元役員)という。システム障害は起こるべくして起こったと言っても過言ではない。
みずほは11月26日、22年4月1日付でみずほ銀行頭取に旧富士銀行出身の加藤勝彦副頭取が昇格する人事を発表した。だが、坂井氏の後任となるFG社長人事は越年したままだ。
みずほの宿痾はシステム障害という形で露呈したが、その底流にあるのは、力が拮抗した3銀行統合の難しさに他ならない。しかも有力商業銀行2行と投資銀行の雄であった興銀が手を結ぶ異例の統合劇であった。「銀行の歴史は、合併の歴史でもある。融和がなにより優先されるが、実際は旧行出身者がいなくならなければ真の融合は実現しない」(メガバンクOB)という。みずほのシステム障害はそのことを象徴している。はたしてみずほは変われるだろうか……。