「大人ファースト」の議論で名称変更

閣議決定された岸田政権の「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」においても、こうした提言をどこまで反映し実現していけるかがポイントとなります。

また「こども庁」という名称が、家庭において虐待されたり、そもそも家庭で育っていない当事者たちの思いを尊重した経緯を鑑みると、当事者の意見を聞くこともなく、与党の「大人ファースト」の議論で急転直下、こども家庭庁という名称にされてしまうことには、これまでの政治プロセスを観察してきた私から見ても違和感を禁じえません。

日本の子供
写真=iStock.com/TkKurikawa
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「こども家庭庁」は、家庭教育の重要性を主張する自民党右派議員の強固な主張によって、名称変更されたという経緯があります。

従来、公明党は「子ども家庭庁」を主張しています。一方で立憲民主党は、2021年5月31日に国会に提出した子ども総合基本法案で「子ども省」に変更しており、以後、子ども省で統一していますので、組織名称については国会論戦の対象ともなりうるのではないでしょうか。

※編集部註:初出時、立憲民主党は「子ども家庭省」を主張しているとありましたが、訂正しました(2021年12月23日18:45)。

家庭環境は年々衰えてきている

政策の信頼性・効率性を高めるために子ども・若者の参画の重要性を主張し、関係省庁で実現してきた教育政策の専門家としては、もう少し慎重な手続きがあって良いと考えます。

具体的には家庭で虐待被害にあってきた当事者や、子ども・若者、子育て当事者の意見も聞き、こども家庭庁という名称でほんとうに大丈夫か考えを深める機会を今後作ることが必要ではないかと考えます。

閣議決定された基本方針でも「こどもの視点、子育て当事者の視点」にたった政策立案の方針が示されています。

もちろん多くの子ども・若者にとっては、家庭が安心できる場ではありますが、その家庭が子どもを愛し守り育てる環境も、低賃金化・非正規化、そして日本社会の子ども・若者への冷たい態度の中で、年々衰えているというのが、大学教員であり子ども・若者支援にも関わる私自身の実感です。