市民の感性をもとに、科学的知見を磨いてほしい

新藤宗幸『権力にゆがむ専門知 専門家はどう統制されてきたのか』(朝日新聞出版)
新藤宗幸『権力にゆがむ専門知 専門家はどう統制されてきたのか』(朝日新聞出版)

さらに、専門家会議=分科会が「権威」ある助言機関として政治および社会から見做されるためには、専門知は常に市民の感性に敏感であり、それをもとにして科学的知見を磨いていかねばなるまい。これはCOVID-19に関連して設けられた専門家会議=分科会を構成する専門知にのみもとめられることではない。市民の感性からの乖離は、科学分野の細分化と制度化によって失われがちな学問的態度だが、自然科学、社会科学を問わず自らの学問的営為を問いなおしてみる必要があろう。

政治(政権)は、常に使いやすい専門知を重用する。専門知は内輪の会合において議論を重ねても、社会的発信力が乏しいならば、政権の行動の「追認」と社会は受け取ってしまう。そして科学的リテラシーに欠ける政治は、社会的憤懣ふんまんをたくみに操作し独善性を強めてしまう。専門知にはこうした政治に対抗することが問われていよう。

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