「あえて『沈黙の外交』を堅持する考えでいる」

笹川会長が、ようやくブログであらためてミャンマー問題について書いたのは、クーデターから3カ月以上が過ぎ、数百人の市民が抑圧の犠牲になった後の5月中旬になってからであった。「沈黙の外交」と題された5月13日の笹川会長のブログは、ミャンマーに携わる人々の間で反響を呼んだ。笹川会長は、言論人・メディア不信を披露しながら、次のように述べた(*16)

ミャンマー問題について、「『ミャンマー国民和解日本政府代表の笹川』は何故ミャンマー国軍を批判しないのか」と、にわかミャンマー専門家やSNS上で批判を受けている。(中略)

今回の事態が発生した2月1日以降も人命尊重に向け、懸命の説得工作を重ねた。にもかかわらず極めて残念な事態に発展したミャンマーの現状は、痛恨の極みであり、悶々とした日々を過ごしている。

ならば何故、非難声明を出さないかと人々は私を批判する。(中略)

民間人である私がミャンマー国民和解日本政府代表を拝命したのは、長年にわたるミャンマーでの人道活動が評価された結果である。この役職に任期はない。(中略)

私の立場はそれぞれの指導者に寄り添い、意見を聞いて話合いの場を作り、なによりも関係者から信頼を勝ち得ることが大切である。面子を重んじるミャンマーにおいて外国人である私の発言はことのほか注目されているだけに、言葉には細心の注意が必要と心している。(中略)

如何なる批判、中傷を浴びようとも、何とか問題解決への道筋はないかと日々、苦慮し、問題解決の任を負った者として、覚悟をもって任務を全うするため、あえて「沈黙の外交」を堅持する考えでいる。

つまるところ、国軍非難をしてしまえば、国軍からの信頼を失って「日本政府代表」として調停活動を行うこともできなくなる。それはしたくない、ということである。

人道支援活動を通じて得た信頼を生かして、政治調停分野での貢献も期待されて「日本政府代表」となった笹川陽平会長にとっては、これ以外にはとりうる立場はない、とも言えるかもしれない。