不況で、優秀すぎる人材がどっと応募してきたら
政治家や経済学者がアメリカの景気回復についてまだ半信半疑でいるなかで、再び採用を始めたマネジャーたちは新たな問題に直面している。
現在、募集中のポジションにどっと応募してくる「オーバー・クオリファイド」の候補者、すなわち必要以上の能力を持つ人材にどう対処すればよいかという問題である。
一般的には、このような候補者は採用しないほうがよいとされている。だが、景気後退によって一流の人材を獲得する未曾有のチャンスが生まれていることと、このような候補者の活躍ぶりに関する新しい調査結果によって、そういった風潮は今後、変わっていくかもしれない。
ポートランド州立大学経営学教授で、このテーマに関する新しい調査報告の筆頭著者、ベリン・エルドガンによると、採用担当者はこれまで、必要以上の能力を持つ候補者の採用はリスクがあるとして避けてきた。
「そのような人材は仕事に退屈し、やる気をなくすので、同僚より低い成果しかあげないか、さっさと退職するかのどちらかだと考えられていた」とエルドガンは語る。
だが、エルドガンの調査は、こうしたリスクは実は思い込みである可能性のほうが高いことを示している。実際、この調査では、必要以上に高い能力を持つとみなされていた社員たちが、むしろ同僚より高い成果をあげていたのである。
たとえ、自分はこの仕事をするには能力がありすぎると思っていたとしても、それだけでは人材というものはめったに転職しないものだ。
「社員が会社に留まったり会社を辞めたりする決め手になるのは自分のスキルではない。労働条件だ」と、彼女は言う。
エゴンゼンダーインターナショナルのシニア・アドバイザーで、『Great People Decisions』(邦訳『人選力』)や『The Definitive Guide to Recruiting in Good Times and Bad』の著者としても知られるクラウディオ・フェルナンデス・アラオスも、必要以上の能力を持つ社員の採用にはリスクより利点のほうが多いと考えている。
「採用の決定を下すとき、ビジョンを持ったリーダーは現在のニーズだけでなく将来にも焦点を合わせる」と、彼は言う。素晴らしすぎる履歴書の山を前にしたとき、採用担当者が考慮すべき点をいくつか紹介しよう。