「アメ」を共有しないことで解釈が異なる

例を出してみましょう。

部下が「ライバル企業が我が社より安い見積もりを提案してきた」という報告をしてきたとします。それを聞いた上司は、「ライバル会社より高くない印象を持たせるように、再度見積もりを取るように」という指示を出しました。それを受けて、部下が安い見積もりを作って持っていったところ、「じゃあ、今までは高く売りつけていたのか」と相手企業に激怒され、信頼を失ってしまった……。

なぜ、このような問題が起きたのでしょうか。「ライバル企業が我が社より安い見積もりを提案してきた」ことに対する解釈がなされていなかったからです。

上司としては、「うちのほうが付加価値が高いことを提示し、決して高くないという印象を与えることが必要」と解釈したのに対し、部下は単純に「安さで勝負することが必要」と解釈したということです。

この事例の場合は「高くない印象」というあいまいな言葉を使ってしまったという問題もありますが、やはり根本的な問題は、「アメ」が共有されていなかったことでしょう。アメさえ共有しておけば、「品質が高く壊れにくいので、ランニングコスト的にライバルよりお得」と説得するか、「導入費用を安くするが、メンテナンスコストで回収を図る」かを、部下も判断することができたはずです。

松本利明『できる30代は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)
松本利明『できる30代は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)

だからこそ部下はなるべく「アメ」を伝えるべきですし、上司は部下の報告にそれが抜けていると感じたら、積極的に聞き出すようにすべきです。こうすることで、認識のずれはかなり解消されるはずです。

一方で、上司の指示に「アメ」が抜けているようなら、部下のほうからそれを確認する必要もあります。これは、「上司がどのように判断するのか」を知るチャンスにもなります。

ポイントは、「今後どうなりそうか?」という未来予測です。それを元に打ち手を考えていくわけですから、ここにズレが生じると解釈や打ち手にズレが生じてしまいます。

ただ、これは難しいことではありません。「どうなりそうか?」を上司と部下で確認すればいいのです。たったこれだけのことで、認識のずれは解消されるのです。

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