※本稿は、米田倫康『ブラック精神医療 「こころのケア」の不都合な真実』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
「Go To精神科キャンペーン」と呼ぶにふさわしい報道や施策
報道にせよ、国や自治体の施策にせよ、自殺問題をはじめとするメンタルヘルス問題については、とにかく早期に専門家に相談したり、専門の医療機関を受診したりするように促す内容で占められています。早期に相談さえすれば解決できると期待を抱かせるものから、早期に専門家に相談しないと最悪の事態に陥るぞと半ば脅すようなものまであります。右も左も関係ないその大合唱は、まさに「Go To精神科キャンペーン」と呼ぶにふさわしいほどです。
そのような大政翼賛会的なキャンペーンは多くの問題を抱えています。ところが、新型コロナ感染症拡大にともなう不安が広がり、自殺者数も増加する状況では、何らの疑問を持たれることなく社会に受け入れられてしまっています。では、実際の報道の例を挙げ、どこに問題点があるのかを具体的に指摘してみましょう。
「自殺者増加…専門家『9割は診断可能』早めの治療を」というタイトルで放映されたテレビ朝日のニュース(2020年9月29日)がWeb版でも公開されていましたので、以下引用します。
日本自殺予防学会・張賢徳理事長:「一般論として自殺で亡くなってしまう人の9割くらいは精神科の診断がつく。ぜひ本当に医療機関や相談機関に相談してほしい」
日本自殺予防学会の張理事長は自ら命を絶ったほとんどの人についてうつ病などと診断できるとして、早めの治療開始が一番の予防方法だと指摘します。
「『コロナ禍で女性の自殺が増えている』日本自殺予防学会理事長が警鐘“負の連鎖”」というタイトルでAERA dot.に掲載された週刊朝日の記事(2020年10月11日)でも、同じ専門家の言葉が以下のように引用されています。
反対に、そういった精神医学的な病気がなくて死を選ぶ人は3%にも満たないです。