悪質なケースでは、契約時に代金の10割を受け取っておきながら、着工前に業者が倒産してしまったという例もある。家は建たないのにローンだけは満額残る、悪夢のような事態も考えられるのだ。
いまのところ、この問題についての公的な救済措置は見当たらない。また、役員や従業員個人に対して責任を問うにしても、支払い能力の点から実効性はあまり期待できないだろう。となると、契約時に「危ない会社か否か」を見極める目が必要になるのである。
業者が多額の代金を前受けしたがるのは、資金繰りが苦しいからだ。消費者側の用心として、「法外な前払いを要求する会社は倒産のおそれがある」(谷合弁護士)と考えておいていいのではないか。
先に述べたとおり、販売業者が倒産しても売却(消費者が購入)済みの住宅には影響は及ばない。だが、欠陥への対応などアフターサービスは別である。
住宅の欠陥は当初10年間なら販売業者に指摘して直してもらえる。そんな話を聞いたことがある人は多いだろう。根拠となるのは、2000年に施行された住宅品質確保促進法(品確法)だ。
「欠陥」といっても、正確には「構造耐力上主要な部分」とされる柱や梁などの欠陥(瑕疵)や雨漏りなどに限られる。したがって、配管部分など他の欠陥は対象外になってしまうのだが、それでも買い手側にとっては心強い制度である。
ただし、当事者である販売業者が倒産してしまえば話は別だ。支払い能力がないので賠償も修理もできない、ということになりかねない。
代わりに施工業者(販売業者から工事を請け負った工務店や建設会社)を相手どり「欠陥住宅をつくった」ことに対する不法行為(民法709条)の責任を追及することもできるのだが、それには購入者側が欠陥と工事内容との因果関係を証明しなければならない。だから「従来は買い手側が泣き寝入りをするケースが多かった」(谷合弁護士)というのだ。
だが、09年10月1日からは様相が変わってきた。住宅瑕疵担保履行法が施行され、それに基づき住宅瑕疵担保責任保険制度が始まったからだ。住宅の欠陥が判明すれば、仮に販売業者が倒産しても購入者は上限2000万円の保険金を受け取ることができるのである。
※すべて雑誌掲載当時