マンション・デベロッパーや戸建て住宅メーカーの破綻が相次いでいる。売り手が倒産しても入居はできるのか、建設中ならどうか、欠陥が見つかったら……。買い手にとっても不安は尽きない。

住宅訴訟に詳しい谷合周三弁護士によれば「売買契約が成立していればその物件は購入者のものです。販売業者が倒産しても影響はありません」という。少なくとも、部屋をとられてしまうことはないのである。未契約の段階ならどうか。

「業者の倒産が売買契約の前であれば、買わないという選択がありえます。契約後であっても、引き渡しを受ける前なら取り消し(売買の解約)も可能。その場合は、代金の一部(1~2割)を先払いしていると思いますが、あらかじめ供託金を積んでおくルールがありますから、業者が倒産しても、そこから先払い分を返してもらえます」

法外な前払いを要求する会社は危険

ただし、以上はマンションや建て売り住宅を買うときの話。厄介なのは注文住宅の場合である。

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自分が建築主になり住宅メーカーに家の建築を依頼する。このときの契約は「売買」ではなく「請負」だ。

売買契約の場合は業界ルールで「引き渡し時に8~9割を支払う」とされているが、請負については統一したルールが存在せず、売買と比べて前払い金の比率が高いのが特徴である。一般には契約時に3割、上棟時に3割、引き渡し時に4割を支払うとしているケースが多い。実質的に業者の資金繰りを消費者が助けるという珍しい仕組みになっている。

そこで日弁連は「引き渡し時に9割、2カ月後に1割」という新ルールを提唱しているが、浸透させるには時間がかかりそうだ。商取引は本来自由であり、当事者同士の合意があれば、前払い金を多めに設定しても違法とはならないからだ。