「不景気だからマンション販売も厳しいだろうとよくいわれます。でも、意外に成約率は悪くないんです。長いこと価格が低迷しているので、これ以上は落ちないだろう。要するに『底』だと思う人も一定数いらっしゃいますから」

三井不動産グループでマンション販売を手がける藤沢侑氏(ペンネーム)はこう語る。2009年、首都圏のマンション発売件数は4万戸弱と最盛期の半分以下に激減した。そのせいもあって成約率の改善が進んだという。

底打ちから反転へ。業界には淡い期待が生じている。大手各社は09年秋ごろから再び用地取得に動き始めた。

すると、いまは「買いどき」なのだろうか?

「いつも申し上げることですが、割安だったら買えばいいと思います。たとえば、2~3年前なら東京・豊洲地区のマンションは坪220万円ほどでしたが、各社が重点販売しているうちに1年ほどで坪300万円に値上がりしました。1年で3割の上昇です。220万円で買った人は絶対に得をしましたね」

資産価値が上がれば得をする。確かにそうだ。ただ、転売せずに住み続けるつもりなら、市況がどうなろうと気にする必要はないだろう。なぜ「割安」にこだわるのか。

「ずっと安定した生活が続くならいいんです。しかし、長い人生には何があるかわかりません。1年後に完成する物件を販売しますよね。さあ引き渡しというときになると、必ず1割ほどは、やむをえない事情でキャンセルが発生します。ということは、10年経ったらほぼ全員に何かが起こりうる。仮に10年後に失業したとして、その間にマンションの資産価値が上がっていれば助かるわけです。だから資産価値にはもっと敏感になるべきだと思うんです」

藤沢氏が「割安なら買え」という真意はそこにある。割安ということは、潜在的な価値より現在の値付けは安いということだ。では、価値を見抜くにはどこに注目したらいいのだろうか。

以下、実践編に移ろう。