他方、「修繕積立金」については「さほど重視しなくていい」というのが藤沢氏の意見だ。一般には、あまり安すぎると将来の修繕資金が不足するといわれているが、「当初の修繕積立金は安いのがふつうです」という。

売り手は販売時に20年目までの修繕計画を説明しなければならない。あとは管理組合が計画に沿って5年目、10年目と節目ごとに値上げをしていく形である。だが、それだけでは足りないと藤沢氏はいう。

「ほんとうに修繕費用が膨らむのは20年目以降です。だから30年目までの修繕計画をつくっているかどうかをチェックするといいでしょう。計画はつくっても義務ではないから買い手には教えていないケースもありますが、聞けば教えてくれると思います」

悩ましいのが定期借地権付きの物件である。50年以上の長期契約で土地を借り、期間満了後は必ず更地にして返さなければいけない。そのような制約があるため、定借マンションは一般の分譲マンションに比べて1000万円ほど安い値段がつけられている。

「期限を迎えた物件が一つもないので将来的な価値は判断しにくい」というのが営業マンの本音だろう。

定借マンションを買うときに、いちばん注意すべきところは「地主は誰か」ということだ。実は公表の義務がないため広告にはほとんど出てこない。

「地主さんが企業なら、倒産のリスクがあります。権利がほかへ移って、地代の値上げを迫られるかもしれません。逆に安心なのは、お寺(宗教法人)のように昔から借地経営を生業にしているところや公有地です。広告に出ていないときは営業マンに聞くことです。大きな額の契約をするのですから、相手が何ものかを確認するのは当たり前だと思いますよ」

一般の分譲マンションを買うときも、売り主に対してもっと関心を持つべきだと藤沢氏はいう。広告が振りまくイメージや営業マンの甘言にだまされてはいけない。当の営業マンが、心配そうにつぶやくのである。

※すべて雑誌掲載当時

(宇佐見利明=撮影)