20代におけるLINE利用率は97.7%
LINE会話は、相手の顔が見えない、文字を中心としたコミュニケーションであるが、対面や電話でのおしゃべりに似た一面もある。会話を終える場合、対面では、互いに何度もお辞儀をしたり別れの挨拶を繰り返し言い合ったりすることが一般的だとされている。また、電話では、用件を再確認したり別れの挨拶を交わし合ったりといった一連の流れによって会話の終結に向かっていくことが一般的だ。これらはいずれも、別れ際における相手への配慮であり、円滑なコミュニケーションのために行われる一定の行動様式とされるものである。
では、顔が見えず声も聞こえない、文字中心でのやりとりがなされるLINEでは、どうやって会話を終わらせているのだろうか。そして、そもそも、会話を終わらせる際に、気を遣ったり戸惑ったりすることはあるのだろうか。
総務省情報通信政策研究所「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、大学生を含む20代におけるLINE利用率は97.7%とほぼ100%に近く、日常的に利用しているコミュニケーションツールであることは間違いない。ここでは、そのLINEを取り上げ、やりとりを終わらせる場面では、いったいどのような工夫をしているのか、その実態をみてみたいと思う。
「1対1」では気にする、「グループ」では気にしない
調査対象としたのは、関西の武庫川女子大学で、2020年度における筆者の授業の受講者198人(有効回答数186)である。オンライン授業の中で、グーグルフォームに設置した質問に受講者が回答を入力する方法で調査を行った。設問内容は、「1対1」と「グループ」の2場面にわけ、それぞれについて、「LINEをやめたい時にはどのような方法をとっているか」、「やめどきにまつわる経験談」について尋ねた。得られた回答に「困った経験」がある場合はやめどきを気にしているととらえられる。
図表1、図表2には、LINEのやめどきを気にするか、あるいは、気にしないかについての結果を示した。
「1対1」の場合は約95%と、ほとんどの大学生がLINEのやめどきを気にしている。反対に、「グループ」では「気にしない」が約76%と4分の3以上を占め、対照的な結果である。「1対1」ではお互いが唯一の当事者であるため、会話を切り上げるタイミングをはかる難しさを感じたり、会話を終えることに対して慎重になったりすることもあるだろう。そのため、相手への配慮がより強く意識され、やめどきが気になると考えられる。
ここから、文字を中心としたオンライン上のやりとりであっても、特に「1対1」の場合は、やめるタイミングを見極めることに難しさを感じていることが分かる。他方、「グループ」の場合は、自分以外のメンバーが対応してくれるだろうと思えるため、比較的気が楽である。それが「気にしない」結果として表れたと言える。