発売から13年、『TSUNAMI』を抜いて歴代1位に

2016年、グループの解散危機が報じられると、今度はファンが大きく動いた。誰に指示されるでもなく『世界に一つだけの花』のシングル購買運動が巻き起こった。結果、この年だけで40万枚を売り上げ、サザンオールスターズの『TSUNAMI』を抜いてCDシングルとしては歴代1位のセールスとなった。

SMAPは、平成という時代を最も象徴するグループだ。筆者はそう考えている。その理由は単なる人気やセールスの数字だけではない。1988年の結成から2016年の解散まで28年間、国民的グループとして、最も光のあたる場所で日本社会の変化に寄り添い続けたのが彼らだったのである。

SMAPの初期構想は「新しいドリフターズ」だった

SMAPは、決して順風満帆の道を歩んできたグループではない。1991年9月9日リリースのデビュー曲「Can’t Stop!! -LOVING-」はオリコン週間ランキング初登場2位。少年隊や光GENJIなどデビューから首位を獲得しセンセーションを巻き起こしたジャニーズ事務所の先輩グループに比べると物足りない結果だ。その後のシングルも売上枚数は苦戦が続いた。

背景には『ザ・ベストテン』などの歌番組が軒並み終了していたことがあった。歌謡曲の時代が終わり、アイドルがゴールデンタイムに歌を披露する場はテレビから失われていた。デビュー曲の首位獲得を阻んだのはその年に13週連続1位を記録したCHAGE&ASKA「SAY YES」だ。ヒット曲の生まれる道筋が変わっていた。

過渡期の時代に船出をしたグループが活路を見出したのがお笑いやバラエティ番組の世界だった。

「SMAPを“平成のクレージーキャッツ”にしたい」

ジャニーズ事務所社長(当時)のジャニー喜多川は、彼らのデビュー当初からそんな意向を持っていた。新しいドリフターズにしたいと考えていた。歌だけでなく、コントもできるグループ。『シャボン玉ホリデー』のクレージーキャッツから『8時だョ!全員集合』のザ・ドリフターズへと受け継がれた、テレビバラエティの世界で「音楽×お笑い」のエンタテインメントを体現する国民的グループだ。

これまでのアイドルになかった「男性ファン」も増やす

SMAPの「育ての親」として知られる担当マネージャー飯島三智の尽力もあり、彼らのスター性はドラマやバラエティ番組を通じて大きく花開いていった。木村拓哉や稲垣吾郎は俳優として「月9」ドラマで主演をつとめ、中居正広や香取慎吾や草彅剛は『笑っていいとも!』にレギュラー出演し、90年代半ばにはテレビで彼らの顔を見ない日はないほどの人気者になっていった。