「僕たちに今、何ができるでしょうか?」

背景にはイラク戦争の渦中にある当時の政治情勢があった。

この曲のテレビCMでは「もし、世界中のすべての人が、ありのままの自分を好きになれたら、戦争なんてなくなると思う」というメッセージをメンバー5人が読み上げた。イラク戦争開戦前夜の3月7日夜、SMAPがニュース番組『NEWS23』(TBS系)に出演した際には、アメリカや日本での反戦運動の模様が放映された後にこの曲が紹介され、キャスターの筑紫哲也は「これは反戦歌だと思う」と語った。

そして2003年の紅白歌合戦。SMAPは初の大トリをつとめた。その演出も、特別な意味合いを込めたものだった。

ステージに白いスーツ姿の5人が立つ。「皆さん、目を閉じて2003年を思い出してください」と木村拓哉が告げると、中居正広が「今年、世界中で沢山の尊い命が失われました」、稲垣吾郎が「また、目を覆いたくなるようなこともたくさんありました」と続ける。草彅剛が「僕たちに今、何ができるでしょうか?」と問い、香取慎吾は「みんながみんな全ての人に優しくなれたら、きっと幸せな未来がやってくると信じています」と語る。そして「世界に一つだけの花」を歌った。

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社会が揺らぐとき、歌にはどんな力があるのか

筆者は、この曲が直接的な“反戦歌”だとは考えていない。歌詞にも戦争にまつわる明示的な表現はないし、MONGOL800「小さな恋のうた」や一青窈「ハナミズキ」と違い、楽曲のモチーフの背景に戦争やテロリズムがあったわけでもない。

ただ、重要なのは、この曲が「そう受け止められた」ということだ。それはつまり、SMAPが単なるアイドルグループというよりも、もっと社会的な存在として見られたということを意味する。ポイントは「僕たちに今、何ができるでしょうか?」という問いかけだ。

社会が揺らぐとき、歌にはどんな力があるのか――。

平成を通して、たびたびそんな問いに向き合ってきたのがSMAPというグループだった。

たとえば1995年1月20日。阪神・淡路大震災の直後に出演した『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で、彼らは予定されていた新曲を変更し「がんばりましょう」を歌っている。たとえば2011年3月21日。東日本大震災後初の放送となる『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)では「いま僕たちに何ができるだろう」と題した緊急生放送を行い、被災者への思いを語り「がんばりましょう」と「世界に一つだけの花」を歌っている。その後も彼らは被災地への訪問や支援を続け、義援金の募集は同番組が終了するまで続いた。