必要な日光浴の時間は地域によって異なる

(1)日光紫外線の刺激を受けて皮膚で合成する方法

ビタミンD生成のために日光浴が有効なことは各種機関で言われていますが、推奨されている日光浴の回数や時間はそれぞれ異なっています。季節、地域、天候、時刻、服装、皮膚の色など、さまざまな要因で左右されるため、一律に示すことは難しいのです。

ある研究では、日本人にとって1日に必要とされているビタミンD(調査時点の2010年当時は5.5μg)を顔と手の日光浴のみによって体内で生産するのに必要な日照時間を求めた結果、12月の12時の札幌では約76分、つくばでは約22分、沖縄では7分かかることが分かりました(※4)

(※4)Miyauchi, M, C. Hirai, and H. Nakajima,: The solar exposure time required for vitamin D3 synthesis in the human body estimated by numerical simulation and observation in Japan. Journal of Nutritional Science and Vitaminology, 59, 257-263, 2013.

しかし、冬の札幌で76分もの間外でじっとしているのは現実的な手段ではありません。北陸など冬場は曇り空が多くなる地域もあり、そのような場合にはさらに日光浴の時間を増やす必要ができてしまいます。日光浴を兼ねてウォーキングをする、顔や手だけではなく足や腕など日光に当たる部位を増やして日光浴の時間を短くする、等無理のない範囲での工夫が必要となるでしょう(※5)

(※5)国立環境研究所「体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定 札幌の冬季にはつくばの3倍以上の日光浴が必要」)

冬の公園を歩く笑顔のカップル
写真=iStock.com/HRAUN
※写真はイメージです

適度な日光浴でビタミンDを補給する

読者の中には「紫外線を浴びる」ことに抵抗を感じる方も少なくないと思います。日常的には紫外線の効能よりも悪影響が取り上げられることが多いですし、テレビに出演している女優さんやモデルさんが、美容のために冬でも紫外線対策を徹底しているという話は当たり前のように耳にします。

確かに紫外線は過度に浴びることで皮膚の細胞のDNAを傷つけ、紅斑、シミを作る原因となりますし、場合によっては皮膚がんを引き起こす可能性もあります。WHO等では皮膚に紅斑を起こす最少の紫外線量を、「1MED」として定義しており、この量以上の紫外線を多く浴びることにより上記の疾病の危険性が高まるとされています。

ただしある研究では、紫外線量が1MEDに達するには、必要なビタミンDを生成する紫外線照射時間の約4~6倍の時間が必要だという結果となりました。紫外線を過度に避けることはむしろ不健康にもつながるということをご認識いただき、適度な日光浴で十分な量のビタミンDを補給することが理想的だと考えます(※4)。なお、日光浴によるビタミンDの生成では、必要以上に作られることがないため、摂りすぎによる被害の心配もありません。